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国内大学の国際化を牽引する「スーパーグローバル大学」をチェック!

2014年に、文部科学省がスタートさせたスーパーグローバル大学創成支援事業。この事業で選出された「スーパーグローバル大学(SGU)」は、国内で世界水準の教育研究を行う、日本のグローバル化を牽引する大学といえます。今回は、国際社会で活躍するグローバル人材を目指し、国内のグローバル系大学を視野に入れて志望大選びをしようとしているなら、ぜひ知っておきたいSGUについてご紹介します。

国内大の国際化を牽引するスーパーグローバル大学

「スーパーグローバル大学(SGU)」の概要

「スーパーグローバル大学創成支援事業」とは、2014年から文部科学省が日本の高等教育の国際競争力を強化し、優れた能力を持つグローバル人材を育成することを目的として実施している事業。世界トップレベルの大学との交流・連携を実現、加速するための新たな取り組みや、人事・教務システムの改革、学生のグローバル対応力育成のための体制強化など、徹底した国際化を進める大学を重点支援しています。
スーパーグローバル大学(Super global university:SGU)とは、この事業において文部科学省に採択された、日本の国際競争力向上やグローバル人材の育成のために重点支援を受ける大学のことを指します。

支援対象となる大学は一般公募され、全国の104の大学がそれぞれに国際化を実現するための構想を練って応募。「学生及び教員の外国人比率の向上」「成果指標の設定と徹底した情報公開」「英語による授業の拡大」などのベース要件に沿って、各校の教育力や研究力、グローバル化の進捗状況などの審査が行われ、国・公・私立の大学37校がスーパーグローバル大学として採択されました。大学個々の特性を活かしつつ、学長のリーダーシップのもと、徹底した国際化を断行する、日本のグローバル大学のモデルを構築する大学が選出されています。
SGUの37大学には、2023年度までの10年間に1大学当たり最高約4億2000万円の補助金が毎年支給され、大学改革や国際化を進めることになっています。

スーパーグローバル大学には2種類のタイプがあります。

◆ タイプA[トップ型]:13校 (標準支援額 4億2000万円)

⇒世界大学ランキングのトップ100を狙える実力がある、世界レベルの研究を行う大学

区分 大学名 所在地
国立 北海道大学 北海道
国立 東北大学 宮城
国立 筑波大学 茨城
国立 東京大学 東京
国立 東京医科歯科大学 東京
国立 東京工業大学 東京
国立 名古屋大学 愛知
国立 京都大学 京都
国立 大阪大学 大阪
国立 広島大学 広島
国立 九州大学 福岡
私立 慶應義塾大学 東京
私立 早稲田大学 東京

◆タイプB[グローバル化牽引型]:24校 (標準支援額 1億7200万円)

⇒これまでの実績を基にさらに新たな取り組みに挑戦し、日本のグローバル化を牽引する大学

区分 大学名 所在地
国立 千葉大学 千葉
国立 東京外国語大学 東京
国立 東京芸術大学 東京
国立 長岡技術科学大学 新潟
国立 金沢大学 石川
国立 豊橋技術科学大学 愛知
国立 京都工芸繊維大学 京都
国立 奈良先端科学技術大学院大学 奈良
国立 岡山大学 岡山
国立 熊本大学 熊本
公立 国際教養大学 秋田
公立 会津大学 福島
私立 国際基督教大学 東京
私立 芝浦工業大学 東京
私立 上智大学 東京
私立 東洋大学 東京
私立 法政大学 東京
私立 明治大学 東京
私立 立教大学 東京
私立 創価大学 東京
私立 国際大学 新潟
私立 立命館大学 京都
私立 関西学院大学 兵庫
私立 立命館アジア太平洋大学 大分

SGUに入学するメリット・デメリット

徹底した国際化と教育改革を10年計画で推し進めているSGU。では、SGUに入学すると、学生にとってはどんなメリットがあるのでしょうか?

メリット

●高い英語スキルを獲得できる環境

充実した外国語学習環境の整備は、SGUの大きな課題。そのための教育改革が推し進められており、英語のみで学位取得が可能なプログラムや、リーダー人材育成を推進する教育プログラムの開設、海外大学との共同学位プログラムなど、各大学で多様な教育プログラムが導入されています。学生や教員の外国人比率の上昇による授業のグローバル化も進んでおり、英語でプレゼンテーションやディスカッションをする機会も増加。高いレベルの英語スキルを獲得できる環境が整えられています。

●充実した留学制度

SGUでは海外留学支援に力が入れられています。各大学では、世界の大学との連携が強化され、短期海外派遣プログラムやグローバルインターンシップの導入など多彩な留学プログラムが提供されています。それに加え、留学のためのカウンセリングや語学力向上のための支援、海外安全・危機管理体制の強化などの留学サポートも充実。安心・安全な留学体験は、グローバルに活躍できる力を育むことに役立ちます。

●グローバルで多様性を持つキャンパス

日本からの留学支援と併せて、外国人留学生を積極的に受け入れ、交流する体制の整備が進められているのもSGUの特徴です。留学生用の短期プログラムの設置や、日本語・日本文化センターの解説、日本人学生と留学生とのシェアハウスや寮を設けている大学もあります。世界各国から集まる、異なる文化や価値観を持った仲間たちが集うキャンパスは、日本にいながらにして世界と関りながら毎日を送れるグローバルな環境。海外の言語・文化・習慣に触れる機会や時間が、圧倒的に増えることが期待できます。

デメリット

では逆に、SGUに入学することで学生にデメリットはあるのでしょうか?

SGUは10年間という長期間の取り組みとなります。厳格な審査を突破してSGUとして採択された各校ですが、実は毎年度、事業に適合しているかどうかのチェックが行われています。SGUへの支援開始から4年が経過した2018年には文部科学省による中間評価が行われ、各大学の取り組み状況が5段階(S~D)で評価されました。「優れた取り組み状況である」(S評価)とされたのは以下の6校のみとなりました。

  • ・筑波大学
  • ・名古屋大学
  • ・豊橋技術科学大学
  • ・国際基督教大学
  • ・上智大学
  • ・創価大学

中間評価をもとに各大学では一層の取り組みが重ねられていますが、事業が終了する2024年まではあと4年。各大学が構想時に掲げた長期的な目標をどこまで実現できるか、事業が終了した後も取り組みを継続し、国際競争力を高めていけるかは、大学ごとに異なる可能性があります。デメリットというほどではありませんが、SGUに採択されているからといって過信するのではなく、それぞれの大学の取り組みや実績などを公表されている資料でしっかりウォッチしていく必要はあるでしょう。

SGUの大学ごとの取り組み例

<タイプA・TOP型の取り組み例>

東京大学

東京大学グローバルキャンパスモデルの構築

 

■構想の概要■
「東京大学グローバルキャンパスモデルの構築」の主旨に基づき、2024年までの期間で非英語圏における研究型総合大学のモデルとなるようなグローバルキャンパスの実現を目指す。

<グローバルキャンパスモデルの6つの特徴>

  • 特徴1)学術各分野における世界最高・最先端の研究の推進・展開
  • 特徴2)グローバル化時代にふさわしい教育システム:流動性と多様性を向上させる学事暦、グローバルな視野を持つ知的リーダー育成カリキュラム
  • 特徴3)英語で学位を取得できるコースや英語での体系的な授業カリキュラムの充実
  • 特徴4)日本的な価値や見方を生み出す日本語による高度な教育や研究、多言語による授業
  • 特徴5)多様な構成員からなる平等で多様性を活かした教育・研究・運営
  • 特徴6)グローバルキャンパス構想を強力に推進する組織と高度な専門職員

<グローバルキャンパスモデル構築のための3つの課題>

  • 課題1)学事暦の変更と総合的教育改革を通じた新教育システムの創生とその充実
  • 課題2)海外の大学との戦略的パートナーシップを活用した教育研究の国際展開
  • 課題3)グローバルキャンパス構想の企画立案と実務遂行を進めるためのプラットフォーム確立

【参考ページ】スーパーグローバル大学特設サイト 東京大学

慶應義塾大学

「実学(サイエンス)」によって地球社会の持続可能性を高める

 

■構想の概要■
慶應義塾の過去・現在・未来を通して一貫した建学理念である創立者・福澤諭吉の「実証的に真理を解明する科学的な姿勢で自ら考え課題を解決する」という「実学の精神」の強みを生かし、「長寿」「安全」「創造」の3つの文理融合クラスターを中心に共同研究、学生の共同指導、人事交流などを通じて世界の大学との連携を深め、そして高度で学際的かつ国際的な最先端の研究を行い広く世界に貢献する。

<主な取り組み>
1. 国際化の推進
・世界主要大学とのネットワーク
 →海外有力大学と締結している包括・交換協定のネットワークを強化
・ダブルディグリーの先駆として
 →国内最多を誇る23件のダブルディグリープログラムを、10年間でジョイントディグリーと併せて35件に増やす
・海外研究連携拠点の拡充
 →現在ある3つの連携拠点(NUS CUTE Center, CNRS, MINATEC)を、10年間で15拠点に増やす

2. 教員組織の国際化
・テニュアトラック制度(*)の拡充
・クロスアポイントメント制度の導入
 →海外副指導教授により若手研究者(主に博士課程学生)の国際的教育を行う
・外国人教員の積極的採用

3. 教育の多様性
・留学生の積極的受入れ
 →海外からの留学生を積極的に受入れ、10年間で2倍以上に増やす
・英語のみで学位取得可能なコースの拡充
 →現在7つの学部・研究科で行われているコースを、全学的に展開
・留学生用短期プログラムの拡充

4. 研究力の強化
・産業界との強い絆
 →日本トップクラスの産業界との関係を強化し、10年で委託研究を倍増させる
・知的資産の創出
 →10年で特許登録件数を倍増させる
・知の共有

*) 公正で透明性の高い選考により採用された若手研究者が、審査を経てより安定的な職を得る前に、任期付の雇用形態で自立した研究者として経験を積むことができる仕組み

◆ガバナンス改革
学長のリーダーシップの下、グローバルアドバイザリーカウンシルやグローバルスタンダードな人事制度をはじめとするガバナンス改革を断行し、世界トップレベルの大学を目指す

【参考ページ】スーパーグローバル大学特設サイト 慶應義塾大学

<タイプB・グローバル化牽引型の取り組み例>

千葉大学

グローバル千葉大学の新生  ― Rising Chiba University ―

 

■構想の概要■
「未来のグローバルな人材」=「人間力のある人材」であると考え、人間力の育成に必要な「俯瞰力」「発見力」「実践力」を身につける教育プログラムを開発し、グローバル人材育成を推進する。「グローバル千葉大学の新生 -Rising Chiba University-」の構想名のもと、今日のように、グローバルに活躍する人材、イノベーションを生み出す人材が世界規模で渇望される中で、社会経済のダイナミックな変化に柔軟かつ適切に対応できる文理融合型の教養や専門教育を提供できる新組織を創設し、千葉大学を新生(Rising)する。

<グローバル千葉大学で育成する人材像>
「人間力のある人材の育成」=俯瞰力+発見力+実践力

様々な事象を「俯瞰」し、そこからの新たな「発見」をもとに、エキスパートとして「実践」する人材

<千葉大学を新生する4つの改革>
1.ガバナンス改革
国際教養学部の設置、共学教育の拠点形成、全学教育運営支援組織の構築+SULA(※)、教職員機能の充実強化 ※Super University Learning Administrator

2.学修制度の改革
飛び入学の拡大、多様な入試の実施、平成28年度より6ターム制の導入、学内教育制度の国際標準化

3.プログラム改革
「ダブルメジャー制度」によるイノベーション人材育成(「TOKUHISA SCHOOL」)、留学のための「国際教養学プログラム」設置、国際日本学の必修化、セメスター派遣・受入プログラム、大学院ダブルメジャー・メジャーマイナープログラム

4.グローバル・ネットワーク改革
海外キャンパスの設置〔マヒドン大学(タイ)、/シャリテ医科大学(ドイツ)〕、アライアンス交流の促進

<大学独自の数値目標>
753(シチゴサン)+1(タスイチ)計画

「7」– 700科目の英語での授業を実施
「5」– 50% 入学定員の半分(1,200人)が留学
「3」– 3,000人の外国人留学生を受入
「1」– 10% 入学定員の10%(240人)を多様な入試で受入

【参考ページ】スーパーグローバル大学特設サイト 千葉大学

上智大学

多層的ハブ機能を有するグローバルキャンパスの創成と支援ガバナンスの確立

 

■構想の概要■
多層的ハブ機能を有するグローバル・キャンパスの創成と支援ガバナンスの確立を通じ、聖フランシスコ・ザビエルから受け継がれているキリスト教精神を源泉とした教育の精神を備えつつ、地球的課題に対して果敢にチャレンジする人材を国籍の枠を超えて育成する先導的なグローバル教育を展開すること、そしてそれを実現させる環境を整備することを基本的実現項目とする。その方策の柱は、「1.世界を繋ぐ叡智(ソフィア)の醸成」、「2.グローバル・キャンパスの創成」、「3.世界に並び立つ教育研究を支援するガバナンス改革」の3点とする。

◆世界を繋ぐ叡智(ソフィア)の醸成
(1)カトリック大学としての教育の個性化とネットワーク化、(2)グローバル教養教育の体系化と展開、および専門教育との有機的結合、(3)海外に求心力を持つ大学院の整備及び研究拠点の設置を目指し、急速な人類社会の変化とそこでの課題解決に資する特徴ある教育・研究活動の拡充、を図る。

◆グローバル・キャンパスの創成
(1)学生・教職員のモビリティの促進、(2)構成員・キャンパス文化の多様性の確保、(3)国際機関、海外大学、産業界との連携枠組みの充実、を図り、独自性の高い教育プログラムを提供し、海外拠点や海外協定校を含む多層的ネットワークが展開する教育・研究のプラットフォームの形成を目指す。

◆世界に並び立つ教育研究を支援するガバナンス改革
(1)世界に並び立つ大学として、独自性と汎用性を併せ持つ制度の確立、(2)「小さな総合大学」としての柔軟な制度設計と運用、(3)人事評価、教職員構成などの先進的取り組み、を要点とする。グローバル・キャンパス構築を支える教学体制を打ち出し、ダイナミックに変化するグローバル社会に対応する教学政策並びに大学運営の意思決定プロセスを迅速化・高度化する。

<独自の成果指標>
取り組み1) 海外大学・大学院との連携プログラムの強化
フォーダム大学との間協定を締結している「海外大学院特別進学制度」について、同様の制度をほかの有力大学院へも拡大する。平成35年度までには、ダブルディグリー、ジョイントディグリー、海外大学院特別進学制度を合わせて、10校との協定を目指す。

取り組み2) 留学生OB・OGの組織化・ネットワーク化
全世界で活躍している卒業生のネットワークを有効に活用するため、世界的な人材還流の要となる留学生のOBOGの組織化とネットワーク化に取り組む。

取り組み3) 多様な文化圏・地域からの留学生受入
入学者の多様性を生み出すために海外に指定校を設け、特別入試により入学できる制度を拡大させていく。海外指定校は、地域、文化、言語、宗教等のバランスに配慮し幅広い選択を行い、学生のモビリティを促進させ、本学が目指すグローバルキャンパスに資するための多様性を確保する。(2023年度に50校に拡充)

取り組み4) 柔軟かつ多様な受入制度の確立
入学制の多様性を高めるための方策の1つとして、国際バカロレア(IB)を活用した入試制度の拡充を目指していく。

取り組み5) 在外履修制度の拡充
協定を結んだ大学との間で学生が半年間、相互に訪問しあって学ぶ、本学独自の制度である「在外履修制度」は、現在1学科で実施しているが、他学科にも拡大させていく。

 

【参考ページ】スーパーグローバル大学特設サイト 上智大学

地球規模で新型コロナウイルス感染症の拡大が続く現在、世界の大学のあり方は新たな局面を迎えているといっても過言ではありません。オンライン講義の普及に伴い、教育や研究の国際連携などについても様々な対応が模索され続けています。SGUをはじめとした国際化を推進してきた国内大学も、現状の中でいろいろな可能性を追求しており、コロナ禍を乗り越えた先は新たな進化の時を迎えるかもしれません。高等教育に対する価値観の変化から、コロナ後は大学や学生のさらなる国際標準志向が一気に高まる可能性もあります。日本における大学の国際化を先導しているSGUの取り組みは、今のうちからぜひチェックしておきましょう。

※この記事でご紹介している内容は2020年11月20日現在の情報に基づいています。

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