海外大学進学情報

国を決めたら、次にどうする?留学版・「主体的な」志望大選び5つのヒント


何年か後に高校を卒業したら、「海外大進学・留学をしてみたい!」…と思っている、もしくは思うようになってきた皆さん。では、実際に、海外の志望大学はどうやって選びますか?新型コロナをめぐる世界情勢はいまだ予断を許さず、見通しは不透明な状況です。行ってみたい「国」まではなんとなく決まっても、海外旅行のついでに気になる大学を見てくるというわけにはいかない状態が、今後もしばらくは続いていくことが予想されます。大学ランキングは重要な参考資料になりますが、それ以外はどのような観点で「自分がときめく・目標とする大学」を選び、対策を始めたらいいか迷うことが多いのではないでしょうか?そこで今回は、あらためて海外の大学について調べ、比較するための「観点」のモデルをご紹介します。

海外版・「主体的な」志望大選び5つのヒント

まずは観点別に自分の価値観を整理
自分なりの優先順位を決めることが大切

インターネット環境が整備され、多くの情報がネットを介して手に入れられる現代。「大学のことを調べよう」と言われたら、コロナ禍の中では、おそらく多くの人が大学の公式ホームページを見るでしょう。ホームページには大学についてのほとんどの情報が記載されているため、非常に便利かつ有効な手段です。

しかし、海外の大学は非常に個性豊か。ホームページ1つとっても、大学の考え方や方針が色濃く出ているため、サイトの構成や情報の出し方、見せ方も各大学で非常にバラエティに富んでいます。サイトのここを見れば、こんな情報が載っている、とは一概に言えず、知りたい情報にたどり着くまでが一苦労ということも往々にしてありえます。言い換えれば、各大学の個性的なホームページの初見の印象は、その大学の雰囲気を感じ取るうえで参考になる情報の1つとも言えるので、そこは大切にしたいポイントでもあります。ただ、大学について本格的に調べたいときは、なんの準備もしないままいきなり大学のホームページや大学ランキング等の比較サイトを見ると、混乱してしまいがちなのも事実です。

漠然とでも行きたい国が決まり、次は大学ごとの詳細情報を調べて、比較検討をしよう!という段階まできたら、いったん立ち止まって、以下の5つの観点について自分なりの考え方やどこに価値を見出すかを整理してみましょう。そのうえで、「自分主体」の優先順位を決めてから、観点に沿ってオンラインで情報をとりに行くのがおすすめです。

海外の志望大選びの5つの観点

① どの分野に強い大学がよいか?

海外の大学の大きな特徴は、大学や学部ごとに強みのある分野がはっきりしていること。つい有名な大学にばかり目が行きがちですが、日本ではあまり名前を知られていなかったり、大学ランキング等に入っていなくても「◯◯の分野では世界トップ」や「△△の分野で優れた研究成果をあげている」といった大学がたくさんあります。
だからこそ、志望大学を絞り込んでいくためにまず初めに必要なのは、自分が何を勉強したいのか、海外大学での経験から何を得たいのか、将来はどうなりたいのかを、現時点のことでいいので、徹底的に考えることです。

あらかじめ学びたい分野やテーマ、専攻まではっきり固められれば理想的で、その場合はそれをもとに大学・学部を検索することができます。とはいえ、海外大の場合は入学時に必ずしも専攻を決めている必要がなく、それが海外大のメリットの1つでもあるので、幅広く興味を持ったまま留学を目指すのも悪いことではありません。ただそうした場合も、それほど具体的ではなくても、たとえば「国際問題について」とか「海洋環境について」など、ある程度の学びの方向性は明確にしておくことが大切。自分が学びたいことと、各大学の強みを照らし合わせることで、自分に合う留学先は総合大なのか、工学系などの専門的な大学なのか、アメリカのリベラルアーツカレッジのような大学なのか、という点が見えてくるのです。

いろいろなことに興味があり、まずは幅広く学びながら専攻を絞っていきたいのであればリベラルアーツカレッジが向いているでしょうし、将来はグローバル企業でバリバリ働きたいなら国際的なビジネス・マネジメントに強い大学を探せばよいということになります。逆に、そこが曖昧なまま大学を選ぶと、「本当はエンジニアに興味があったのに人文・社会学系に強い大学に入学してしまい、工学系の専門的な研究ができない…」などという状態に陥ってしまうことも。アメリカの場合は比較的簡単に他大学への編入という手段をとることもできますが、できれば初めから興味のある分野を絞って大学選びをした方が効率的な留学ができるはずです。自分が学びたいことを軸に、「この分野を勉強するなら、この大学がベスト」と思える大学を探しましょう。

なお、大学・学部で学べる内容を調べる際は、提供されている専攻やプログラムだけでなく、教授や研究テーマ、どんな成果をあげているか、さらには研究に関わる設備なども、できる限りチェックするとよいでしょう。もしわかれば、学生と教員の比率や、平均のクラスサイズ、授業の内容やシステム(講義中心なのか、ディスカッション中心なのか、など)も確認できると、自分がどんな環境で授業を受けられるのか想像することができます。

② 学校の規模はどれぐらいがよいか?

アメリカをはじめとした英語圏の国々には、非常に多くの大学があります。大学の種類や得意分野だけでなく、大学の規模も多種多様であり、それぞれに特徴があります。

学生数が数万人にのぼるような大規模な大学は、その地域の学生だけでなく世界各国から多様な人種の学生が集まっており、キャンパスがグローバル環境であることが多々あります。そうした多くの学生が快適に学ぶ環境を整えるために、より多くのリソースを持っている大学が多く、学生寮、図書館、学習スペース、コンピュータシステム、ヘルスセンター、運動施設、文化・娯楽施設など、様々なキャンパス施設が充実している傾向があります。また、大学院レベルの研究に力を入れているため、科学、工学、その他の研究分野の教員や教室のテクノロジー、研究開発ラボのために、多額の予算が投資されている傾向もあります。
なにより大規模大学の大きな特徴として挙げられるのは、非常に多くの専攻や専門分野のコースが提供されていること。日本ではなかなか見たことのない珍しい専攻があることも。多彩な学問的選択肢が用意されているので、専門性の高い分野に興味がある場合や、学際的な学びを追求する専攻を希望している人には適しているかもしれません。最先端の学びを、広く深く実現する充実した設備・環境や、桁外れの多様性が大規模大学の魅力と言えるでしょう。

対して、小さな大学には、大規模大学が提供することが難しいタイプの良さがあります。まずはなんといっても、キャンパスのサイズが小さく、クラスは少人数になるため、大学全体がアットホームで、学生同士や教員と密な関係性を築ける傾向があること。キャンパス内のほとんどが顔馴染みで、大学が1つのコミュニティのように感じられるほどの大学もあるようです。学習だけでなく、様々な面で教員から学生一人ひとりが手厚い指導やサポートが受けられたり、クラスの仲間たちと深く交流して友情を育むことが期待できます。
なお、小規模大学の多くはリベラルアーツ教育や、ある特定の分野に特化している傾向があります。大学院はないことが多いので、最新の研究施設などは大規模大学より劣りますが、アメリカの「リトルアイビー」のように大規模大学に劣らない教育の質とレベルを保つ名門大学も多くあります。自分に合った専攻が提供されている大学であればしっかりと学ぶことができるでしょう。

③ どんな課外活動に参加したいか?

自分が学びたい分野の学問に真剣に取り組むことはもちろん大切ですが、大学生活は勉強だけではありません。せっかく海外の大学で4年間過ごすのですから、留学先でしか経験できないような様々なことにチャレンジしたいものです。

大学には、学生自治会やSocietyなどと呼ばれるサークルのような共通の趣味を持つ学生の団体、各種のクラブ、スポーツチームなど様々な課外活動があります。全寮制の大学などには、学生寮のコミュニティがあることも。こうした活動のほとんどは、学生が主体となって運営されています。日本の部活動などとは違って厳しい先輩・後輩の関係などはなく、基本的には誰でも気軽に参加できます。普段の授業では知り合うことのない友人を作れるチャンスですし、自分に合った活動があれば積極的に参加してみると留学生活がより充実するでしょう。

ただ、課外活動にも大学ごとの特色があり、活動の状況はかなり違ってきます。課外活動が盛んな大学ともなると、文科系・スポーツ系・ボランティアなどバラエティに富んだ数百もの団体が活動しているようなケースもあります。ある特定の学生活動が非常に有名な大学もあります。こうした、授業以外の活動の部分がキャンパスの雰囲気を作るという面も否めないので、それぞれの大学のホームページやSNSなどで、どんな課外活動が行われているかをできるだけチェックし、どんなキャンパスライフが送れるかイメージしてみましょう。可能であれば、気になる海外の大学に通っている先輩の話を直接聞けると、その大学の実態がよくわかります。各種の留学イベントなど、先輩方の体験談を聞ける機会があれば、参加してみるのもよいかもしれません。

④ 大学からどのようなサポートが受けたいか?

学生へのサポート体制も、大学によって大きく異なります。

ヘルスケアセンターや学生サポートセンターなどがキャンパス内に設置され、しっかり機能しているかどうかはとても重要。各種のアドバイザーやカウンセラーなど学業や学生生活を支援してくれる専門スタッフが常駐している場合は、心身の健康はもちろん、何か困ったことがあるときにも気軽に相談できるので安心です。国によっては、このようなサポート体制も含めた学生の大学に対する満足度や、大学の学生へのケアについてのランキングをメディアなどが調査・発表していることもありますので、参考にしてもよいでしょう。
また、各大学でどういったキャリアサポート(就職サポート)を受けられるかも、ぜひ確認しておきたいポイントです。大学のホームページに、卒業後の学生の就職先のリストや卒業生の経験談などが掲載されていることもあるので、それらを参考にしてみるのもよいでしょう。

さらに、忘れてはいけないのが、留学生に対する対応。留学生を多く受け入れている大学と少ない大学では、留学生に対する大学からのサポート面でもかなりの違いがあります。留学生に対してスペシャルガイダンスを開いてくれたり、大学院生がサポートとしてつき、英語や論文の面倒をみてくれたり、留学生向けの奨学金が充実していたりと、あらかじめ制度として整えられている大学もあれば、特に留学生向けサポートと銘打っていなくても、学生側から要望を出せば対応してくれる柔軟な大学も。
たくさんの留学生が学んでいて、サポートにも力を入れている大学の場合は、ホームページでも詳細に情報を掲載していることが多いので、しっかりチェックしてください。

⑤ どのような環境にある大学がよいか?

海外で大学に通うということは、キャンパスのある街で生活する、ということです。日本から海外大に進学する場合、ほとんどの人が保護者のもとを離れて一人暮らしをすることになるので、大学周辺の環境は留学の充実度・満足度を大きく左右する非常に重要な要素となります。たとえ大学が気に入り、大学での学びには不満がないとしても、生活する都市が好きになれないと大学4年間がいまひとつ残念なものになりかねません。

自分は、賑やかで刺激的な大都市に住みたいのか、それとも比較的人口の少ない、静かな場所に住みたいのか?都会的なビルに囲まれていたいのか、大自然に囲まれた場所がいいのか?まず考えたいのはそこですが、チェックしたいポイントはまだまだあります。できれば、自分の好きなこと・嫌いなことを細かく見ていきたいものです。

【チェックポイントの例】

  • ・美術館や博物館が多い場所がいいのか?
  • ・古い建築物がたくさんある歴史的な街がいいのか?
  • ・夏や冬のスポーツに適した場所がいいのか?
  • ・演劇やショーなどのエンターテインメントについてはどうか?
  • ・いろいろな場所にすぐに旅行に行ける交通の便が良い場所がいいのか?
  • ・雨が多かったり、冬が寒かったりと、その土地の天候は苦手ではないか?
  • ・地域の文化には馴染めそうか?
  • ・街の人はどんな雰囲気か?
  • ・日本人、あるいはアジア人はどれぐらいいるか?
  • ・犯罪は多くないか?危険な場所は多くないか?
  • ・留学生がアルバイトできる場所はありそうか?

加えて、同じ国でも住む都市によって物価がかなり異なることがあります。大学の寮に入るのか、アパートなどを借りるのかによっても違いますが、最終的な留学の総費用に大きな差が出ることもあります。食料や衣料、家賃などの相場は要チェックです。

また、都市の安全性は必須のチェックポイントですが、都市だけでなくキャンパス自体の安全についても考慮する必要があります。多くの大学がキャンパスや周辺地域の犯罪統計を公表しているので、しっかり確認してください。

街の雰囲気は実際にその場所に行ってみないとなかなかつかめないところもありますが、コロナ禍の現状では大学や都市のホームページ、観光サイトなどを通じて、できるだけ情報を集めましょう。YouTubeなどで発信されている動画や、Googleのストリートビューなど、Web上で提供されている様々なツールを上手に活用してみるのも1つの方法です。


大学のホームページを見てもわからないことがある時には、Eメールで大学に直接問い合わせることもできます。また、ホームページから資料請求ができる大学もあり、詳細な大学紹介や入学についての資料等を送ってくれることもあります。国によっては、大学探しをサポートしてくれるWebサイトが運営されていることもあるので参考にするのも良いでしょう。

5つの観点について考えるためには、自分が何を大切に思うかという、しっかりした自己分析が必要になります。早い時期から自己分析を始め、こうした観点に明確に答えられるようになることは、自分の「価値基準」を知ることにほかならないのです。誰かのとっての良い大学が、自分にとっても良い大学とは限りません。 なぜ海外の大学で学びたいのか?自分は何に興味があって、将来はどうなりたいのか?志望大選びは、自分自身について理解を深めるプロセスそのもの。自分を知ることは、自分が進む道を選択するうえで、力強い武器になるはずです。

アメリカのリベラルアーツカレッジについては、回を改めて詳しく取り上げます。お楽しみに!

※この記事でご紹介している内容は2020年12月11日現在の情報に基づいています。

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