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留学は「何を学ぶか」で決める! -5- 「コミュニケーション・メディア研究」に強い大学・学部の特徴とは?


海外大学の教育レベルや語学力だけでなく、「何を学ぶか」を重視して海外留学を考えるために、人気の専攻分野から留学先を考えるシリーズの第5回。今回取り上げるのは「コミュニケーション・メディア研究」です。人と人とが関わり合う全ての環境で必要となる能力の1つとして、「コミュニケーションスキル」が挙げられます。海外では、あらゆる形態のコミュニケーションを政治的、文化的、言語的、文学的、解釈学的背景から探求していくコミュニケーション学は、ポピュラーな学問としてさかんに研究されています。とくにテレビやインターネット、広告、映画など「メディア」と深い関わりをもつ同分野は、多くの大学で「メディア&コミュニケーション学」コースとして提供されています。ソーシャルネットワークの爆発的普及に見られるように、デジタルメディアも人々の新たなコミュニケーションツールとして急速な発展を遂げている現状があり、様々な形のコミュニケーションに精通し、革新的なアイデアと問題解決能力を持った人材が、現代ではあらゆる業界で求められています。

世界でメディア&コミュニケーション学に強い大学

海外大学で学べる「メディア&コミュニケーション学」

現代社会においては、メディアやコミュニケーションが関わる範囲は、より多様かつダイナミックになっています。比較的新しい学問分野であるメディア&コミュニケーション研究は、現代のメディア全盛ともいえる文化的景観を背景に、関連分野が幅広く、非常にエキサイティングでパワフルな学問として、人気が高まっています。
メディア&コミュニケーション学の学位課程は、メディア関連の業界で働くための人材を育成することを主な目的としています。メディアが世界を反映し、表現し、影響を与える方法を批判的に分析することができるように、学生を訓練するカリキュラムとなっています。 メディア研究の分野では、主題によって内容やアプローチが大きく異なりますが、道徳的、政治的、歴史的などさまざまな観点からメディア表現を分析する機会とともに、さまざまなメディアキャリアのための実践的な準備を組み合わせて提供しています。たとえば、映画制作やコピーライティングなどの実践的なスキルを習得することから、性別や人種、あるいは特定の文化や政治的対立などのメディア表現について探求する授業などもあります。
コミュニケーション研究の分野は少し広めで、「メディア」として一般的に考えられている分野を超えて、あらゆる種類の環境および文脈における人間のコミュニケーションを探求していきます。ジャーナリズム、マーケティング、エンターテイメントなどのメディアでのキャリアだけでなく、ビジネス・マネジメント、教育、政治、国際関係、法律などが含まれます。
プログラムは通常、講義、セミナー、上映、様々な実践的な活動と評価、そして一対一での助言(supervision)などが組み合わされており、今日のメディアの世界を広く理解できるように構成されています。1年次のモジュールのほとんどは入門的で理論的なものとなり、2年次からは専門分野を選択することができます。試験やエッセイ、クラスでの発表、筆記課題、さらには映画やオンラインコンテンツ制作などのより実用的なプロジェクト作業など、さまざまな形で課題に取り組み、評価が行われます。

【専攻分野の例】

  • ・コミュニケーションとニューメディア
  • ・ソーシャルメディア
  • ・ジャーナリズム
  • ・出版、編集
  • ・ラジオ、テレビ放送
  • ・映画とメディア研究

メディア&コミュニケーションに関する学部を卒業すると?

メディア&コミュニケーションの学位を取得すると、メディアおよびコミュニケーションの分野で幅広いキャリアが考えられ、また現在も新しいキャリアの可能性は増え続けていると言えます。メディアに関する業界の多くは競争が激しく、ほとんどの学生は大学での勉強と並行して実際的な経験を積むことによって、卒業後の雇用可能性を高めています。ほとんどのメディア&コミュニケーション学部では、学生に対し、メディアに関連する職場のアルバイトやインターンシップの機会を用意しています。カリキュラム内に職場や「ライブ」でのプロジェクトが含まれるコースもあります。また、メディア関連分野だけでなく、様々な対象者に情報を効果的に伝達するコミュニケーションスキルの知識を生かして、企業内の人事や広報、マーケティングなど、社内や顧客に対応する部門で活躍する道や教育・法律などに携わるキャリアも考えられるでしょう。

【キャリアの例】

  • ・ジャーナリスト
  • ・コピーライター
  • ・マーケティング
  • ・PR(広報)
  • ・テレビや映画の制作
  • ・デジタル技術開発

世界で「メディア&コミュニケーション学」に特色のある大学

イギリスの大学評価機関「クアクアレリ・シモンズ社(Quacquarelli Symonds :QS)」による2019年の「コミュニケーション&メディア研究」に関する大学ランキングでは、世界各国から200校がランクされています。ここでは上位にランクインしている大学の中から3校をピックアップし、それぞれの大学・学部にどのような特色があり、何が学べるかをご紹介します。

■アムステルダム大学(University of Amsterdam)[オランダ]:1位

オランダの国立総合大学。マーサー(2018年)のQOL(生活の質)調査では世界中の450都市のうち12位に、エコノミスト(2017年)による世界で最も安全な都市で6位にランクされたほどの、住みやすい街として有名なアムステルダムにキャンパスを構えています。
大学は法学、経済・経営学、人文科学、社会・行動科学、自然科学、医学、歯学の7つの学部で構成されています。近年は外国人学生の教育にも力を入れており、オランダ語でのプログラムだけでなく、英語で学べるプログラムが学士課程で17、修士課程で200近く提供されています。(歯学部はオランダ語のみ)
メディア&コミュニケーションに関する学位プログラムは主に3つあり、さらにアムステルダム・ユニバーシティ・カレッジが提供するリベラルアーツ&サイエンスプログラムでも学ぶことができます。

<メディア&コミュニケーションの学位プログラム>

●コミュニケーション科学(Communication Science)

  • ・指導言語:英語
  • ・期間:36か月

社会におけるコミュニケーションとメディアの役割がこのプログラムの中心的テーマ。ラジオやテレビ、新聞、インターネットに至るまで、コミュニケーションやさまざまな形態のメディアの内容、使用方法、効果について学びます。具体的な研究内容としては、「若者の生活に娯楽が与える影響」「政治参加と市民権におけるメディアとコミュニケーションの役割」「健康コミュニケーションと広告の効果」などが挙げられます。

●メディアと文化(Media and Culture)

  • ・指導言語:英語
  • ・期間:36か月

特定のメディアが異なる文化的背景においてどのように、そしてなぜ特定の役割を果たしているのかを探るプログラム。特定の物語や事実がメディアによってどのように提示され広められるかを通して、メディアが生み出す利益や、創造する世界を研究していきます。映画、テレビ、クロスメディア文化の歴史と理論を学ぶことにより、メディアとのより批判的な関わり合いを発展させていくことを目指します。

●メディアと情報(Media and Information)

  • ・指導言語:英語
  • ・期間:36か月

複雑な情報技術と激化する情報経済によって形作られている現代生活の中で、「情報」は芸術、人文科学、創造産業、ジャーナリズム、そして政府と行政の中心となっています。このプログラムは、デジタルカルチャーとさまざまな形態の情報の探求を行い、サーベイランス、ビッグデータ、デジタルアーカイブ、市民ジャーナリズム、日常生活の計量化など、メディアの絶え間ない変化によってもたらされる文化と社会の変化を理解するための高度な概念的および実用的なスキルを提供します。

■南カリフォルニア大学(University of Southern California)[アメリカ]:3位

アメリカ・ロサンゼルスに本部を置く私立の研究大学。設立は1880年と、アメリカ西海岸で最古の歴史を持ち、大規模な名門校の1つとされています。
同大学には会計学、建築学、芸術・デザイン、芸術・技術・ビジネス、経営学、映画芸術学、コミュニケーション・ジャーナリズム学、ダンス、演劇芸術、歯学部、教育学部、工学部、法学部、音楽など、多くの学部や専門学校が存在していますが、中でも映像関連を扱う映画芸術学部は世界的に高い評価を得ており、著名な映画監督や俳優を多数輩出しています。

●コミュニケーション・ジャーナリズム学部

コミュニケーション、ジャーナリズム、広報外交および広報の分野において、全米でもトップクラスの教育・研究が提供されています。コミュニケーションとジャーナリズムを融合した実践的・学際的な研究やコラボレーションは非常にユニークなものであり、学生たちは理論と実践、またメディア、エンターテイメント技術、グローバリゼーションがクロスしたプログラムから多くを学ぶことができます。卒業生は、通信およびメディア業界で数多くの重要ポストに就いており、学部によって貴重なリソースとなっています。

<学士号を取得できる学位プログラム>

  • •コミュニケーション(BA): 学際的カリキュラムにより、コミュニケーション、説得、リーダーシップの分野で学生がコミュニケーションをとるための準備として、人間の相互作用とテクノロジーがコミュニティ、企業、国、そして世界にどのように影響するかを探っていきます。
  • •ジャーナリズム(BA):デジタルニュースルーム、ラジオやテレビでのニュース制作のための最先端の編集機器、学内メディアで働く機会など、あらゆるメディアプラットフォームを用いて学生に経験を提供しています。
  • •広報(BA):メディアプラットフォーム間でターゲットを絞ったメッセージを書いて伝達することを学びながら、アドボカシーコミュニケーションを促進することができます。

<マイナープログラム>

  • ・広告
  • ・コミュニケーションポリシーと法律
  • ・通信技術の実践とプラットフォーム
  • ・文化外交
  • ・文化、メディア、エンターテイメント
  • ・正義、意見、擁護
  • ・メディア経済と起業家精神
  • ・ニュースメディアと社会
  • ・非営利団体、慈善事業、ボランティア活動
  • ・専門的および経営的コミュニケーション
  • ・広報
  • ・スポーツメディア産業
  • ・スポーツメディア研究

■ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンス(The London School of Economics and Political Science:LSE)[イギリス]:4位

イギリス・ロンドンの中心部にキャンパスを構える、ロンドン大学を構成する大学の1つ。社会科学に特化した教育機関として、経済学、政治学、法学、人類学、会計学、金融学、社会学において世界トップクラスの最先端の研究・教育が行われており、社会科学分野における世界最大の研究機関の1つでもあります。同大学では、40以上の学部課程プログラムと、140以上の大学院プログラムの指導と研究が提供されています。

●メディアコミュニケーション学科

LSEの中心にあるメディアコミュニケーション学科は、コミュニケーションとメディア研究の分野で世界をリードする中心的存在であり、その質の高い独創的な研究と卓越した教育により国際的に有名です。この学科には学部課程はなく、修士課程以上のみとなります。メディアとコミュニケーションに対する多様な社会科学的アプローチを網羅し、修士課程レベルのスペシャリストプログラムと博士課程での研究トレーニングを通じて、世界各国から集まる学生に学際的な大学院教育を提供しています。

<修士課程プログラム>

  • ◇MSc メディアとコミュニケーション
  • ◇MSc メディアとコミュニケーション(データと社会)
  • ◇MSc メディアとコミュニケーション(メディア&コミュニケーションガバナンス)
  • ◇MSc メディア・コミュニケーション・開発
  • ◇MSc 政治とコミュニケーション
  • ◇Msc 戦略的コミュニケーション
  • ◇MSc グローバルメディアとコミュニケーション(2年・ダブルディグリー)

<博士課程プログラム>

  • ◇MPhil / PhDメディアとコミュニケーション
  • ◇MPhil / PhDデータ、ネットワークと社会

様々な媒体を通して生活に溶け込んでいるコミュニケーション
海外で自らの将来のビジョンに合ったプログラムを選択しよう

従来の表現・コミュニケーション手法に加え、SNSなどのデジタルプラットフォームの出現で、現代の「メディア」は複雑で多様化しています。コミュニケーションに精通し、革新的なアイデアと問題解決能力を持った人材は、あらゆる業界で求められています。
海外大のメディア&コミュニケーション学は、実践的なカリキュラムを通して、コミュニケーションに関する幅広い知識と視野を身につけることができます。大学での専門的かつ実用的な研究を経て、技術の進化を目の当たりにしながら、あらゆる状況での「発信力」「伝え方」を身につけることは、将来、メディアの分野で世界に通用するキャリアに繋がるだけでなく、教育、クリエイティブなどあらゆる仕事に直結するようなスキルとなるはずです。人に何かを伝えるプロになりたい、という人はもちろん、コミュニケーションツールやスキルを活かしてできる仕事は、考え方次第で非常に多様なキャリアパスが広がっていると言えるでしょう。メディアとコミュニケーションについて学ぶなら、ぜひ海外に飛び出してみましょう!

※この記事でご紹介している内容は2019年7月19日現在の情報に基づいています。

※この記事は、旧GLCウェブサイトの「グローバル海外進学コラム」2019年7月19日に掲載されたものです。

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