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留学は「何を学ぶか」で決める! -6- 「教育学」に強い大学・学部の特徴とは?


海外大学の教育レベルや語学力だけでなく、「何を学ぶか」を重視して海外留学を考えるために、人気の専攻分野から留学先を考えるシリーズの第6回。今回取り上げるのは「教育学」です。義務教育が普及している現代の日本では、誰もが学校で学んだ経験があるため、「教育学」は意外と身近なもの、という感覚があるかもしれません。それだけに、“海外で”教育を学ぶことにどんなメリットがあるの?と思われがちな部分もありますが、海外の大学で学べる「教育学」は最新の発達学やテクノロジーを利用した研究など様々に展開されており、教育を通して世界を知ることにもつながります。留学生が学位や認定証を取得できる、教育や教員養成で世界をリードする大学もたくさんあります。

教育学に強い世界の大学・学部

海外大学で学べる「教育学」とは

「教育学」とは、子どもから大人まであらゆる教育に関する方法、事象、歴史、理念、思想、制度などについて研究する学問です。
教育学系の分野は、主に教育の対象者によって幼児教育(保育園・幼稚園)、初等教育(小学校)、中等教育(中学校、高校)、特別教育(養護・障害児教育)などに細かく分類されています。これらの分野の教育学位は、学生がさまざまな教育者としての役割で働くための準備をするように設計されており、子どもと接して通じ合うための効果的な口頭または筆記によるコミュニケーション能力や問題解決能力、チームワークスキル、自己管理能力、さらにはカリキュラムの設計や授業の計画、学生の学習能力の把握する方法や健康的でダイナミックな学習環境の作り方なども学びます。 また、より理論に基づいた「教育研究」などの分野もあります。こちらのタイプの教育学位は、現在および過去の教育システムを分析し、その長所と短所を議論することに重点を置いており、教育そのものを研究する学問になるため、教育の改善や子どもの学習方法から、最良の学校の組織構造、教師自身のやる気を維持する方法まで、あらゆる分野を研究していきます。

日本では教員を養成するための学部として教育学部が設置されている大学が多いですが、欧米の大学では教育学は法学や医学と同じく専門性の高い分野であるため、大学院(プロフェッショナルスクール)までの学習となるのが一般的です。そのため、学部課程で「教育学」専攻という形がない場合があり、学部課程での教育学に関する学習は、教育学の基礎を中心に一般教育学を学ぶことが多くあります。そのほかに教育学のコースでは、心理学、社会学、哲学、社会政策、歴史など、幅広い領域を学際的に学び、教育分野でのキャリアを形成するために必要となる知識とスキルの体得を目指します。選択科目では、数学、科学、言語学など多種多様な科目から、自分の興味のある分野を集中的に学ぶことができます。また、教育実習を通して、クラスや学校がどのように機能しているのか、カリキュラムはどのように教授されるべきなのか、教師としての実践的な経験を積んでいきます。心理学、倫理学、言語学、健康保育、学校管理学、その他芸術、数学、科学など、実際に教える教科を学び、教育実習を経験します。

教育学に関する学部を卒業すると?

◇海外では

教師になる場合は、日本のような教員採用試験がある国(アメリカ、フランス、ドイツなど)と、ない国(イギリス、フィンランドなど)があり、教師になる条件もそれぞれ異なります。国によって教育システム自体がかなり多様であるため、教師として働きたい国で教育学を学んで学位を取得し、教師になるための訓練を受けるのが最もスムーズです。
実際に教師として教壇に立つ以外にも、展覧会の学芸員、社会福祉士や言語療法士などのソーシャルワーカー、セラピスト、キャリアアドバイザー、ティーチングアシスタント、ユニセフやSave the children のような国際機関に従事するなど、そのキャリアは様々です。公務員、マーケティング、PR、広告、コンサルタントなど、分析スキルやコミュニケーションスキルが評価される他の業界でキャリアを伸ばしていくことも可能です。

◇日本では

日本の学校の教員になるためには、基本的に日本の教員免許状の取得が必要であり、そのうえで教員採用試験に合格して教師として採用されなければなりません。海外の大学で教員の免許状を取得した場合は、帰国後に都道府県教育委員会が行う教育職員検定を受けることにより、海外大学の免許状を基にした日本で相当する免許状を取得することが可能です。詳細については、日本で住所のある都道府県教育委員会に問い合わせましょう。
海外で免許状を取得していない場合でも、帰国後、日本の大学に3年次編入し、教職課程を履修すれば日本の教員免許状を取得することができ、日本での教師への道が開けます。英語教師になりたいのであれば、海外で大学院まで進学して英語教授法(TESOL)の資格を取得する方法も。TESOLは世界中で通用する資格であるため、アジア、南米、アフリカなど、英語を母国語としない国々でも英語を教えることが可能です。

世界で「教育学」に強い大学

イギリスの教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(Times Higher Education:THE)」が発表している主題別世界大学ランキングの2019年の教育分野には、世界各国の大学が428校ランクイン。また、イギリスの大学評価機関「クアクアレリ・シモンズ社(Quacquarelli Symonds :QS)」による2019年の「教育学」に関する大学ランキングでは、300校がランクされています。ここでは2つの教育学に関する大学ランキングで、上位にランクインしている大学の中から3校をピックアップし、それぞれの大学・学部にどのような特色があり、何が学べるかをご紹介します。

UCL(University College London)[イギリス]:QS1位

UCLはロンドンの中心部に位置し、ロンドン大学(University of London)を構成する高等教育機関の1つ。イギリスの大規模研究型大学が集まるラッセル・グループのメンバーとしても知られる、独立した国際的総合大学です。芸術・人文学、建築科学、脳科学、工学、法学、教育研究所(The Institute of Education:IOE)、生命科学、数理物理学、薬学、人口健康科学、社会・歴史化学の11の学部を有し、学生数は約36,000人、さらに約850人の教授と6,000人以上の学術研究スタッフを抱え、すべての分野で学際的な研究が行われています。また、UCLはイギリス国内で最大の大学院研究システムの1つとされており、学生の50%以上が大学院に進んで学んでいます。

■教育研究所(Institute of Education:IOE)
UCLで教育と関連する社会科学についての研究・教育を行うインスティチュート・オブ・エデュケーション (IOE)は、QSの教育分野のランキングで2015年から5年連続で1位を獲得。世界の教育分野の研究機関において、重要かつ中心的な役割を担っており、著名な教授たちによって革新的な研究が行われています。コースは学部課程、教員養成課程、修士課程、大学院研究があり、教育と社会科学の専門家向けの幅広い短期コースも提供されています。

IOEには6つの学術部門と30を超えるセンターがあります。

  • <学術部門>
  • ●文化、コミュニケーション、メディア:
  • コミュニケーション、文化、メディアの幅広い分野での教育、研究、コンサルティングの卓越した能力を培う。
  • ●カリキュラム、教育学、評価:
  • 地理、ビジネス、数学、歴史、市民権、科学教育の分野で世界をリードするセンター。
  • ●教育、実践、社会:
  • ライフコース全体の教育をサポートするための研究を実施。
  • ●学習とリーダーシップ:
  • 幼少期、初等教育(出生から12歳まで)、そしてリーダーシップを専門とする。
  • ●心理学と人間開発:
  • 幼児期から成人期までの学習、発達、教育に対する包括的な心理的アプローチ。
  • ●社会科学:
  • 教育、健康、労働市場、人間開発、子ども/大人の福利に関する施策に関する世界をリードする研究・教育を行う。

スタンフォード大学(Stanford University)[アメリカ]:THE1位

スタンフォード大学は、アメリカ・サンフランシスコの南に位置するシリコンバレーに本部を置く私立大学。ヤフー、グーグル、ヒューレットパッカードなどの世界的な大企業、およびその他の先端技術企業の多くが本拠地とするシリコンバレーの中心にあるキャンパスは、実に8,180エーカーという広い敷地を持っており、アメリカ最大のキャンパスの1つです。キャンパス内には、18の学際的研究機関と、ビジネス大学院、地球・エネルギー・環境科学部、教育学大学院、工学部、人文科学部、ロースクール、薬学部の7つの学校が設置されており、6,300人以上の学生、2,180人の教員、1,800人のポスドク研究者を抱えています。留学生も世界90か国以上から受け入れています。
現在、大学コミュニティ内のノーベル賞受賞者は19人を数え、さらに芸術、社会科学、ビジネス、政治、人文科学、メディア、スポーツ、テクノロジー等の分野で世界的に有名な多くの卒業生を輩出。スタンフォードの関連会社と卒業生によって設立された企業は、年間2.7兆ドル以上の収益を生み出していると言われます。またTHEやQSの大学ランキングではここ数年、継続として3位以内にランクされるなど、名実ともにワールドクラスの名門大学といえます。

■教育学大学院(GSE)
教育学者、政策立案者、起業家、経営幹部や学校の次世代のリーダーを目指す約400名の大学院生が在籍しています。GSEは、「カリキュラム研究と教師教育(CTE)」「発達心理学(DAPS)「社会科学、人文科学、学際的な政策研究(SHIPS)」の3つの学問分野で編成されています。博士課程および修士課程レベルのさまざまなプログラム、さらに学部課程プログラムも提供しています。取得できる学位は哲学博士号、芸術修士号、教育資格を持つ芸術修士号、さらに公共政策、法律、ビジネスの3つの共同学位となります。

  • <博士課程プログラム>
  • ・教育における社会科学、人文科学、学際的政策研究(SHIPS)
  • ・発達心理学(DAPS)
  • ・カリキュラム研究と教師教育(CTE)
  • ・専門分野横断:学習科学と技術設計(LSTD)
  • ・専門分野横断:教育における人種、不平等、言語(RILE)
  • <修士課程プログラム>
  • ・スタンフォード教師教育プログラム(STEP)
  • ・学習、設計および技術(LDT)
  • ・国際比較教育(ICE)
  • ・政策、組織、およびリーダーシップ研究(POLS)
  • ・国際教育政策分析(IEPA)
  • ・カリキュラム教師教育(CTE)
  • ・教育において個別に設計されたMA
  • <学部プログラム>
  • ・学部マイナープログラム
  • ・学部優等プログラム

香港大学(University of Hong Kong)[香港]: THE4位、QS6位

香港大学(HKU)は、現在、中国の特別行政区となっている香港で最も古い高等教育機関として100年以上の歴史を持つ公立大学。メインキャンパスは香港島の西部に位置し、約100か国からおよそ9,000名の留学生を受け入れている多様なコミュニティが特徴で、教育・研究は主に英語で行われています。芸術・工学・医学・歯学・科学・社会科学・教育・法律・ビジネス経営・建築の10学部で、140以上の学科、研究所/センターにまたがる包括的な学術ログラム・研究が提供されており、研究主導型の総合大学として世界的にも高い評価を受けています。

■教育学部
芸術学部に設立された教師養成部門を起源とし、1984年に教育学部に発展。学部および大学院レベルの教育プログラムだけでなく、情報管理と音声および聴覚科学も担当する多面的な組織となっています。

教育学部には下記の7つの学科(Division)があります。

<学科(Division)>
・中国語と中国文学
中国語と中国文学教育の学者で構成されており、第一言語としての中国語と非ネイティブスピーカーのための中国語の両方に焦点を当てています。

・英語教育
応用言語学、第二言語の教師教育、英語カリキュラムに関連する分野の教育と研究の専門知識を持つメンバーで構成されています。

・情報技術研究
教育および図書館、情報管理の情報技術に関連する分野で、教育と研究の専門知識を持つメンバーで構成されています。

・学習、開発、および多様性
心理学、教育測定、幼児教育、指導とカウンセリング、高等教育、および特殊教育の専門知識を有する学者で構成されています。

・数学および科学教育
科学、数学、および教養教育の教育に関連する分野で、教育と研究の専門知識を持つメンバーで構成されています。

・政策、管理、社会科学教育
学際的な部門であり、政策、管理、リーダーシップ、社会学、高等教育、社会科学教育の専門知識を持つ学者の多様なコミュニティとなっています。

・言語聴覚学
子供および大人で一般的な障害のある人の、コミュニケーション、聴覚、嚥下の専門家で構成されています。

  • <学部課程>
  • ◆学士号プログラム
  • ・言語教育における文学士号および教育学士号[中国語]<BA&BED(LangEd)-Chin>
  • ・言語教育における文学士号および教育学士号[英語]<BA&BED(LangEd)-Eng>
  • ・教育学士号および理学士号<BED&BSC>
  • ・教育学士および社会科学学士<BED&BSS>
  • ・幼児教育および特殊教育の教育学士<BEd(ECE&SE)>
  • ・言語聴覚科学の学士号<BSC(SPEECH)>
  • ◆サブディグリーホルダー
  • ・ソーシャルデータサイエンスの芸術科学の学士号<BASc(SDS)>
  • ・応用児童発達科学の学士号<BSC(ACD)>
  • ・情報管理の理学士号<BSC(IM)>

世界のグローバル化に対応できる教育が求められている現代
海外で幅広い価値観や視点を取り入れた教育学を学ぼう

2020年度から行われる大学入試改革をはじめ、日本の教育制度が大きく変わろうとしている現在。日本で教育学を学ぶのもよいですが、教育を考えていくうえで、海外の大学でさまざまなバックグラウンドや価値観、視点を取り入れた学びに接するのも一つの選択肢ではないでしょうか。日本で就職を考えている場合でも、海外大学で“英語を使って学ぶ”をサポートする教育スキルを身につけた人材は重宝されるはずですし、海外留学で培った英語力も生かすことができます。もちろん、海外で大学院まで進み、海外で教師や教育に携わる仕事をするなど、世界に羽ばたく教育者になるのもよいでしょう(欧米で教育者になるには、学部~大学院にわたって教育学を学ぶのが一般的)。グローバル化が進む世界で、幅広い視野や価値観を持つ教育者はますます需要が高まっています。教育を深く考え、志すのであれば、ぜひ世界に飛び出してみることも検討してみてください。

※この記事でご紹介している内容は2019年8月30日現在の情報に基づいています。

※この記事は、旧GLCウェブサイトの「グローバル海外進学コラム」2019年8月30日に掲載されたものです。

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