海外大学進学情報

THE大学インパクトランキング2020で、「社会貢献度が高い」大学がわかる!

世界で最も権威があると言われる大学ランキングを作成・発表していることで有名なイギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education(以下、THE)」が、2020年4月22日に「THE大学インパクトランキング2020」を発表しました。昨年から発表が始まったこのランキングは、大学の社会貢献の取組みを国連のSDGs(エスディジーズ)の枠組みを使って可視化したもの。今回のランキングでは、新たに指標として6つの項目が追加され、SDGs の17項目すべてで参加できるようになりました。新たな指標で順位がどのように変動したかに注目しながら、世界と日本のランキングをご紹介します。

大学の社会貢献度を軸とするこのランキングは、アメリカ、イギリスを中心とした従来の研究重視の大学ランキングとは大きく異なるのが特徴です。将来、社会とどう関わるかを見据え、大学における「意味のある学び」を考えるうえでの新たな視点と言えます。進路決定の大切な時期、新型コロナウイルスに翻弄され、どのように大学選びをしていいのか迷っている人には、大学選びの観点の1つとして注目していただきたいデータです。

※SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは:国連の「Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標」のこと。17の目標(SDG)から成る。

THE大学インパクトランキング2020でわかる「社会貢献度が高い」大学

大学選びに「社会貢献」という新しい観点
多様な観点・視野で進路を考える手掛かりに

「THE大学インパクトランキング(以下、インパクトランキング)」は、まだ発表が2回目という新しい大学ランキングですが、大学という機関の役割が研究や教育にとどまらず、国や地域コミュニティへの貢献、さらには世界の諸問題の解決に貢献することにまで広がりを期待されている現代において注目度は非常に高く、大学の価値を考えるうえで今後ますます重要な指標となっていくでしょう。総合ランキングだけでなく、各SDGについての関心も高くなっていくはずです。世界中が新型コロナウイルスの猛威にさらされている中で、「SDG 3 健康とウェルビーイング」のスコアが高い大学は、今後脚光を浴びる可能性もあります。

日本の大学にとっても、地方大学、中小規模の大学を含む多くの大学が、自らの取り組みを世界に発信できるチャンスとなっています。従来の大学ランキングとは異なり、研究と教育以外の強みを持つ大学が、その強みと関連するSDG(目標)を自ら選んでエントリーできるため、日本の大学のエントリー数は2年連続で世界最多。ランクイン数においても世界の中で存在感を示しています。THEも今回のランキングについて「日本の大学のいくつかがTHE世界大学ランキングで非常に高い成果を収める一方、社会貢献度という全く新しい指標に基づくこのランキングに日本から多くの大学が積極的に参加し、しかもトップ100に3大学が入ったのは大変素晴らしい」と称賛しています。

サステナビリティへの意識が世界的に高まり、環境や資源などSDGsの学習に取り組む中学・高校も増加しつつある現状の中で、大学によるSDGsへの取り組みは、将来、社会とどのように関わりたいかを考え、その実現に役立つ学びの場を見つけるという、進路選択の新たな視点となりえます。大学の多様性を浮かび上がらせ、大学ブランディングの強力な要素となりうるこのインパクトランキングを、単なる順位付けではなく、「社会貢献」という観点で国内外の大学を見る1つの物差しととらえると、大学選びの幅が広がるでしょう。

THEインパクトランキングとは?

「THE大学インパクトランキング」は、世界の大学が社会課題にどう取り組んでいるかを、国連の「SDGs」の枠組みを使ってランクづけしたもの。気候変動に対する活動やジェンダーの平等、健康と福祉など、大学がもたらす社会的・経済的インパクトの尺度を、国連のSDGsが掲げる17の目標(ゴール)に合わせて設定しています。評判や研究の名声といった従来の指標ではなく新しい基準を活用しているため、地球規模の課題解決に貢献する大学に光を当てるランキングとなっています。

各大学はそれぞれの指標の中からより有利と判断した分野を自ら選び、データを提出することでランキングにエントリーすることができます。2回目となる今回は、「SDG1 貧困」「SDG2 飢餓」「SDG6 水・衛生」「SDG7 エネルギー」「SDG14 海の豊かさ」「SDG15 陸の豊かさ」が追加され、SDGs の17項目すべてで参加できるようになりました。

【参考ページ】Sustainable Development Goals website

【参考ページ】SDGsとは?|JAPAN SDGs Action Platform|外務省

総合ランキングにエントリーする場合は、「SDG17 実施手段」が必須項目で、これに加えて3つ以上の項目についてデータを提出する必要があります。「SDG17」のスコアと、それ以外でスコアの高い3つが総合ランキングに反映される仕組みです。総合ランキングとは別にSDG別のランキングもあり、こちらは自らが強みとする分野(SDG)に1つからエントリー可能で、データを提出した項目(SDG)すべてで対象になります。

「THE大学インパクトランキング2020」総合ランキングTOP10

2回目となるインパクトランキングには、昨年より297校多い857大学が参加し、85か国・768の大学が総合ランキングの対象になりました。ここでは、総合ランキングの上位10校をご紹介します。

■THE University Impact Rankings 2020 総合ランキングTOP10

順位 大学名 国名 スコア 2019年の順位 順位の変動
1 オークランド大学(University of Auckland) ニュージーランド 98.5 1
2 シドニー大学(University of Sydney) オーストラリア 98.1 25
3 西シドニー大学(Western Sydney University) オーストラリア 97.9 11
4 ラ・トローブ大学(La Trobe University) オーストラリア 96.6 (初)
5 アリゾナ州立大学テンペキャンパス(Arizona State University (Tempe)) アメリカ 96.3 =35
6 ボローニャ大学(University of Bologna) イタリア 96.1 9
7 ブリティッシュコロンビア大学(University of British Columbia) カナダ 95.9 =3
8 マンチェスター大学(University of Manchester) イギリス 95.6 =3
9 キングス・カレッジ・ロンドン(King’s College London) イギリス 95.4 5
10 ロイヤルメルボルン工科大学(RMIT University) オーストラリア 94.9 82

今年のランキングのトピックス

<世界では>

総合ランキングの1位は、初回の前年と同じオークランド大学(ニュージーランド)。2位はシドニー大学(オーストラリア)、3位に西シドニー大学(オーストラリア)、4位ラ・トローブ大学(オーストラリア)、5位アリゾナ州立大学(アメリカ)と続き、4位までをオセアニア勢が独占する結果となりました。トップ10までを見ても、オーストラリア4校、ニュージーランド1校とオセアニアの大学が半数を占め、イギリスが2校、アメリカ、カナダ、イタリアが1校ずつと、上位に並んでいる大学・国は研究力を重視する「THE世界大学ランキング」とは大きく異なる顔ぶれとなっています。

総合1位

オークランド大学(University of Auckland)/ニュージーランド

ニュージーランドの北島、オークランドに5つの主要なキャンパスを構える国立大学。医学・健康科学や教育・ソーシャルワーク学部など8つの学部で幅広い学部プログラムが提供されています。世界大学ランキング2020では179位タイと、研究主導型大学として高く評価されており、世界120か国以上から7000人以上の留学生を受け入れています。
「SDG17 実施手段」(3位)、「SDG3 保健」(4位)、「SDG16 平和」(7位)といった項目をはじめ、新しく追加された「SDG14 海の豊かさ」で2位、「SDG15 陸の豊かさ」で3位タイ、「SDG2 飢餓」で8位、「SDG6 水・衛生」で8位「SDG7 エネルギー」で5位タイと高いスコアを獲得しました。

総合2位

シドニー大学(University of Sydney)/オーストラリア

オーストラリアのニューサウスウェールズ州の州都シドニーに、約10のキャンパスを構える公立大学。オーストラリア最古の大学として知られ、160年以上の歴史と伝統を持つ名門校です。オーストラリア国内で高ランクの大学連合であるGroup of Eightに所属しており、16の学部で400以上の専攻コースが提供されています。
「SDG11 都市」(2位)、「SDG8 成長・雇用」(3位)、「SDG17 実施手段」(8位タイ)、「SDG16 平和」(10位)といった項目での高スコア獲得に加え、追加された「SDG2 飢餓」で5位、「SDG15 陸の豊かさ」で5位など高い評価を得ています。

総合3位

西シドニー大学(Western Sydney University)/オーストラリア

オーストラリアのシドニーとその郊外に10のキャンパスを持つ公立大学。1892年創立と、比較的新しい大学ながら、グローバルに評価される教育システムを整え、THEのYoung University Rankings 2020で36位タイにランクされるなど高い評価を受けています。100以上の学部、大学院コースを提供されており、実践的な体験と学術的知識を組み合わせた授業が展開されています。
「SDG5 ジェンダー」(2位)、「SDG10 不平等」(3位)、「SDG12:生産・消費」(5位)、「SDG17 実施手段」(6位タイ)といった項目に加え、「SDG6 水・衛生」で3位、「SDG14 海の豊かさ」で4位、「SDG15 陸の豊かさ」で2位など新しく追加された項目でも高いスコアを獲得しました。

<日本では>

日本からは、今回も世界最多の72大学(前年は63大学)が参加し、63大学(前年は42大学)が総合ランキングの対象となりました。日本の最上位は、76位の北海道大学。次いで東京大学が77位タイ、東北大学が97位と、前回に引き続き3校がトップ100に入りました。初めてランクインした大学には足利大学、白鴎大学、恵泉女学園大学、麗澤大学、多摩大学(いずれも601+)など、地方大学や小規模大学も含まれます。

■THE University Impact Rankings 2020 総合ランキング(日本の大学のみ)上位10校

順位 大学名 スコア 2019年の順位 順位の変動
76 北海道大学 85.3 101-200
=77 東京大学 85.1 52
97 東北大学 83.7 (初)
101-200 広島大学 75.4-83.3 201-300
101-200 京都大学 75.4-83.3 48
101-200 立命館大学 75.4-83.3 (初)
101-200 筑波大学 75.4-83.3 (初)
101-200 早稲田大学 75.4-83.3 (初)
201-300 名古屋大学 68.2-75.3 (初)
201-300 名古屋市立大学 68.2-75.3 101-200
201-300 岡山大学 68.2-75.3 301+
201-300 信州大学 68.2-75.3 (初)
201-300 山口大学 68.2-75.3 101-200

エントリーが必須のSDG17を除くと、日本の大学が最も多くエントリーしたのは「SDG3 保健」と「SDG4 教育」。さらに、「SDG9 イノベーション」もエントリー率が高くなっています。
17項目中、トップ100に入った日本の大学が最も多かったのは、今回新たに設定された「SDG2 飢餓」で、10位の北海道大学はじめ11校がランクインしました。
「SDG9 イノベーション」と「SDG12 生産・消費」には、トップ100にそれぞれ8校がランクイン。とくに「SDG9 イノベーション」では東京大学が1位タイ、東北大学が9位、さらに筑波大学も20位にランクイン。トップ10に2大学入ったのは日本のみと、この分野で高い評価を得ています。
また、今回新たに設定された「SDG14 海の豊かさ」と「SDG15 陸の豊かさ」のトップ100にも、日本からそれぞれ8校と7校がランクインしました。
対して、「SDG4 教育」「SDG5 ジェンダー」「SDG7 エネルギー」「SDG10 不平等」は、トップ100入りした日本の大学がゼロという結果でした。

※この記事でご紹介している内容は2020年7月24日現在の情報に基づいています。

LINE UP

海外、国内を問わず、グローバルな進路を実現する
学習プログラムをご用意しています