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留学は「何を学ぶか」で決める! -4- 「建築学」に強い大学・学部の特徴とは?


海外大学の教育レベルや語学力だけでなく、「何を学ぶか」を重視して海外留学を考えるため、人気の専攻分野から留学先を考えるシリーズの第4回。今回取り上げるのは「建築学」です。建築学というと、日本では工学分野に位置付けられることがほとんどで、理系のイメージが強いですが、実際は工学的な技術面だけでなく芸術的な感性面でも深い知識・技術が必要とされる学問。海外大学では、その両面を最新の設備を介して総合的に学べるプログラムが整備されています。近年は、地球環境への意識の高まりや、都市化の拡大などを背景に、環境工学や都市計画など幅広い領域をカバーしている大学・学部が多いのも特徴です。

建築学に強い海外の大学・学部

海外大学で学べる建築学

「建築学」とは、人間が安心して社会生活を営み、より豊かな生活環境を実現するため、構造物や建築物の研究を行う学問。安全で快適な生活のための住宅や施設の設計・施工から、都市や地域の開発計画まで、幅広く研究していきます。 “建築”というと、建物の設計というクリエイティブな側面に目が行きがちですが、建築学の分野では工学とデザインという科学的・芸術的観点の両面からのアプローチが必要とされます。建物の構造や材料、建築方法、設計やデザインスキル、エンジニアリング、3Dグラフィックス、コンピューター、といった内容から、世界の建築文化の流れや歴史、建物のデザイン、法律、環境問題、室内環境まで、様々な領域を総合的に学んでいく必要があります。まさに、科学・技術と芸術を融合させた学問といえるでしょう。

典型的な建築学の学位は、建築の歴史と現在の傾向、主要な研究方法、関連法規、保全と持続可能性の課題、数値スキルなどを本質的に理解できるように設計された、コア建築コースから始まります。建物の梁がどのような役割を担うか、といった基本的なことから、3Dデザインを正確に描画する方法まで、手作業とコンピュータプログラムの両方を駆使して学んでいきます。歴史、理論、技術に関する講義やコンピュータによるデザインチュートリアルにも参加します。また、建築学的に興味深い重要な建物や場所を訪れ、エッセイを書くということも頻繁に行われており、建築学の学位プログラムの中心的要素となっています。2年目以降はそれぞれ専門とするトピックを1つ以上選択し、学んでいくことが多いようです。

【専門分野の例】

  • ・建築技術
  • ・建築工学
  • ・建築デザイン
  • ・建築の歴史
  • ・インテリア建築
  • ・造園
  • ・都市計画

学部レベルで建築学を学ぶ場合は、プログラムに応じて3~4年でBA またはBScの学位を取得します。国によっては5~6年のコースになる場合もあります。
建築士として働けるライセンスの規制は国・地域によって異なりますが、多くの場合、少なくとも5年間の勉強(学士号および修士号の学位レベル)と2年間の実務経験を積む必要があります。

建築学系の学位を取得すると

建築学系の卒業生のほとんどは、大学院まで修了して建築士のライセンスを取得し、プロの建築家として現場で活躍することになります。自営業、もしくは建築事務所等とパートナーシップを結ぶなどして個人で仕事をするだけでなく、企業に就職して働く場合もあり、多様なキャリアが広がっています。扱う仕事の内容も、住宅建築に焦点を合わせるか、商業デザインを専門にするか、大規模公共プロジェクトのデザインに参加するか、または一度に複数の異なる小規模クライアントのために働くかなど、様々な選択肢があります。屋外スペースの計画、設計、および管理に重点を置いた景観建築や、町や国の環境計画・運輸計画などを含む建築計画の立案に携わるキャリアも考えられます。小規模の会社では、建築家は設計だけでなく、クライアントの財務の処理、請負業者との雇用と交渉、計画、予算編成、およびプロジェクト全体の円滑な運営の確保などを行うこともあります。
また、特にクリエイティブでビジュアルなスキル、技術力、建物の知識を生かした職業に就く場合も。職種としては、空間デザイン、グラフィックデザイン、舞台や映画のセットデザイン、建築物の測量、住宅政策と計画、建設、さらに環境保全の仕事などが含まれます。

世界で建築学に強い大学

イギリスの大学評価機関「クアクアレリ・シモンズ社(Quacquarelli Symonds :QS)」による2019年の「建築/建築環境」に関する大学ランキングでは、世界各国から200校がランクされています。ここでは上位にランクインしている大学の中から何校かをピックアップし、それぞれの大学・学部で何が学べるかをご紹介します。

■UCL(University College London)[イギリス]:1位

ロンドンの中心部に位置するUCLは、ロンドン大学(University of London)を構成する高等教育機関の1つであり、イギリスの大規模研究型大学が集まるラッセル・グループの一員でもある、国際的な総合大学です。医学、工学、ライフサイエンスなど11の学部を有しており、すべての分野で学際的な研究が奨励され、プログラムにも反映されています。
Bartlett (Built Environment)と呼ばれる建築環境を専門とする学部は、建築、計画、空間分析からエネルギー、プロジェクト管理、途上国の開発まで、異なる10の分野についてそれぞれ最先端の研究機関を持つグローバル学部。QSの建築学ランキングでは、総合スコアが98、学術的評判のスコアは100点満点を獲得しています。
建築に関する学部プログラムは、以下の3つがあります。

  • ●Architecture BSc(建築学の学位)…建築を実践するためのスキルとその創造的な使用方法について学ぶ3年間のプログラム。プログラムの約70%がデザイン教育に費やされます。
  • ●Architectural & Interdisciplinary Studies BSc(建築学的および学際的研究の学位)…自らの関心分野にあわせて、UCLの他のモジュールと建築の研究モジュールを組み合わせて受講することで、独自の学位を取得することができる、非常に学際的な性質を持ったユニークな学位プログラムです。3年間と4年間のコースがあり、後者は1年間の留学を含みます。
  • ●Engineering & Architectural Design MEng(エンジニアリング&建築デザインの工学修士)…建築とエンジニアリングの主要分野を組み合わせ、将来の業界リーダーになるべき人材を育成するため、業界のリーダー陣と密接に連携して設計された4年間のプログラム。創造性とデザインを工学教育の中心に置くことで、それらが相互に作用してより強化され、高度な設計方法論が確立されていくことを目指す学際的な学位となっています。

■デルフト工科大学(Delft University of Technology)[オランダ]:3位

オランダ・デルフトに拠点を置く国立大学で、オランダでは最も古い技術系の大学です。航空宇宙工学、応用科学、建築・建築環境、土木工学・地球科学、電気工学・数学およびコンピューターサイエンス、工業デザイン工学、機械・海洋および材料工学、技術・政策およびマネジメントという8つの学部で構成されており、その中に約40の技術的・科学的な専門分野のコースがあります。修士課程のプログラムはすべて英語で行われていますが、学部レベルのプログラムはほとんどオランダ語です。
建築・建築環境学部では、建築学の分野の学士・修士・博士プログラムだけではなく、ランドスケープ建築、住宅、建築物理学、そして気候設計と持続可能性を含む関連分野でもプログラムが提供されています。
建築学、アーバニズム学、建築科学の学士号を取得できる学位プログラムは、3年間のコースで、使用言語はオランダ語です。技術、理論、デザインを組み合わせたこのプログラムのカリキュラムは6セメスターで構成されており、そのうちの5つ(主に1~2年目)は固定プログラムですが、残りの1つ(3年目)はマイナーの選択科目を自由に選ぶことが可能です。カリキュラム全体を通して、学生はテクノロジー、デザイン、社会、そして構築された環境の間の相互作用について学び、分析的で創造的なスキルと空間的な適性を養っていきます。
プログラムで扱う分野は非常に幅広く、建築、アーバニズム、景観建築、建築技術、建築管理、不動産管理、そして地理情報学など、様々な専門分野から多彩なトピックを取り上げています。プログラムの内容は実例を挙げた講義、歴史と技術に関するセミナー、実地研究プロジェクトに焦点を当てた実践的なセッション、また個人やグループで行うデザインプロジェクトなどがあります。講義やデザインプロジェクトを担当するのは、大学と提携した専門家や建築・建築環境の分野で実際に活躍するゲスト講師です。

■カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley ,UCB)[アメリカ]:6位

アメリカ・カリフォルニアのベイエリアであるバークレーにあり、カリフォルニア大学システムの10の大学の中でも中核的な研究総合大学。アメリカで最も権威ある州立大学の1つとも言われています。
14のスクール、カレッジが設置されており、環境デザインのカレッジの中に建築学部、景観建築学部、都市・地域計画学部があります。建築学の学部課程は、環境デザインと建築の必須コースと、多様な個別プログラムを組み合わせた4年間のプログラムで、建築学専攻としてBA(文学士号)が取得可能です。最初の2年間は基礎的な分野のコースと、入門的な環境デザインコースを幅広く受講します。3年次からは建築について集中的に学んでいきます。
建築学部では、デザインの技術的、美的、文化的要素、さらには環境史、持続可能性、行動科学、資源管理、デザイン理論のコースが提供されています。コースワークは、以下の研究分野内で実施することができます。

  • ●デザインと職業実習
  • ●建築と都市主義における社会的・文化的プロセス
  • ●デザイン理論、方法、実践
  • ●建築科学と持続可能性
  • ●構造と建設
  • ●建築とアーバニズムの歴史
  • ●開発途上国における環境デザインとアーバニズム

■マンチェスター建築スクール(Manchester School of Architecture)[イギリス]:9位

イギリス・マンチェスターのほぼ中心部に位置し、マンチェスターメトロポリタン大学(MMU)とマンチェスター大学(UoM)がコラボレーションして運営している、イギリス最大の建築スクールの1つです。100年以上の経験を持つ2つの大学の建築分野の35名を超える専門家と、50か国以上からの700名を超える学生が学際的な建築研究を行っています。同スクールの建築学分野の学生は、マンチェスター大学とマンチェスターメトロポリタン大学の両方のキャンパスで、ワークショップやスタジオ、スタディースペース、学生の組合を利用することが可能です。
スクールでは建築学の学士(BA)過程と、建築に関するいくつかの修士課程が提供されています。建築学の学士課程、修士課程はいずれもイギリスの建築家登録委員会(ARB)と英国建築家協会(RIBA)によって承認されているため、学士号プログラムを修了することでARBおよびRIBA Part 1の専門資格を得ることができます。
プログラムは3年間のカリキュラムで、1年目は現代建築の実践についての理解が中心です。スタジオベースのプロジェクトを通した描画、モデリング、およびソフトウェアベースの表現の要点を学ぶスキルプログラム、歴史・理論の講義とセミナー、技術学習として材料の認識と建物の詳細を示すためのケーススタディとモデルの作成などが行われます。2年目は、設計プロセスの多層的な性質を探ると同時に、都市理論と専門的な持続可能性の知識を設計プロジェクトに適用していきます。技術的な行為であると同様に社会的、文化的行為としての建築という文脈を発展させるための相互に関連した一連のプロジェクトを通して、デザイン知識を構築していきます。3年目は、現代建築とアーバニズムに関する自らの立場を固め始める時期です。それまでのコースで得られたスキル、創造性と経験に基づいた、人文科学、技術、スタジオユニットで構成されます。スタジオユニットでは、通年のプロジェクトとして、都市のさまざまな文脈でデザインの課題に取り組みます。

多種多様なキャリアが見込める建築学
幅広い視野で学ぶなら、海外に飛び出そう

建築学専攻は、将来的に仕事の充実感と経済的報酬の両面から満足できるキャリアに繋がることを見込めることもあり、海外では非常に人気のある分野です。建築物の設計だけでなく、地球規模の課題を踏まえつつ幅広い視野で都市環境について考えるなど、今後さらに扱う領域が増えて世界的に需要が増えることが期待できる、大きな可能性を秘めた学問でもあります。海外大学の建築学プログラムは、様々な分野を総合的に学習していくことができ、建築を広い視野でとらえることがきるのが大きなメリット。最先端の建築学を学ぶなら、海外へ飛び出してみるのもいいのではないでしょうか。
工学という理系的な分野に加え、芸術的な内容の授業も多い海外大の建築学専攻では、学習分野の振り幅がかなり大きいのが特徴です。それぞれの分野に関する専門的な内容をきちんと理解し、そのうえで自分の考えを表現していくための高い英語力が必要になりますので、興味がある方はしっかりと英語の準備をしていきましょう。

※この記事でご紹介している内容は2019年6月21日現在の情報に基づいています。

※この記事は、旧GLCウェブサイトの「グローバル海外進学コラム」2019年6月21日に掲載されたものです。

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