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THE大学インパクトランキング2022で、「社会貢献度が高い」大学がわかる!

「THE世界大学ランキング」で有名なイギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education(以下、THE)」が、2022年4月に「THE大学インパクトランキング2022」を発表しました。大学の社会貢献の取組みを国連のSDGs(エスディジーズ)の枠組みを使って可視化したこのランキングは、2019年からスタートしており、今回で4回目の発表となります。大学の社会貢献度を軸としているため、アメリカやイギリスを中心とした従来の研究重視の大学ランキングとは大きく異なるのが特徴です。将来、社会とどう関わるかを見据え、大学における「意味のある学び」を考えるうえでの新たな視点と言えるでしょう。

新型コロナウイルスが全世界を襲い、まさにコロナ時代とも呼べるような混乱の時期を経て、最新ランキングはどのように変化しているのか?進路を決定する際に、大学選択の観点の1つとして、ぜひ注目してみてください。

※SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは:国連の「Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標」のこと。17の目標(SDG)から成る。

【参考ページ】Impact Rankings 2022|Times Higher Education

THE大学インパクトランキング2022でわかる「社会貢献度が高い」大学

THE大学インパクトランキングとは?

「THE大学インパクトランキング(Impact Rankings)」は、世界の大学が社会課題にどう取り組んでいるかを、国連の「SDGs」の枠組みを使ってランクづけしたもの。気候変動に対する活動やジェンダーの平等、健康と福祉など、大学がもたらす社会的・経済的インパクトの尺度を、国連のSDGsが掲げる17の目標(ゴール)に合わせて設定しています。評判や研究の名声といった従来の指標ではなく新しい基準を活用しているため、地球規模の課題解決・サステナビリティに対する大学の貢献度に光を当てたランキングとなっています。

【参考ページ】Sustainable Development Goals website

【参考ページ】SDGsとは?|JAPAN SDGs Action Platform|外務省

各大学はSDGsの17の目標の中から、より有利と判断した分野を自ら選んでエントリーします。ランキングには総合ランキングと、SDG別のランキングがあります。
総合ランキングにエントリーする場合は、「SDG17 実施手段」が必須項目で、これに加えて3つ以上の項目についてデータを提出する必要があります。「SDG17」のスコアと、それ以外でスコアの高い3つが総合ランキングに反映されます。
SDG別のランキングは、各大学が強みとする分野(SDG)に、1つからエントリー可能。データを提出した項目(SDG)すべてで対象になります。

【参考ページ】Impact Rankings 2022: methodology

「THE大学インパクトランキング2022」結果概要

4回目となる今回のインパクトランキングには、110の国・地域から過去最多の1524校が参加。総合ランキングでは106の国・地域の1,406の大学がランク入りを果たしました。

■THE University Impact Rankings 2020 総合ランキングTOP10

総合ランキングの上位10校をご紹介します。

順位 大学名 国名 全体スコア 2021年の順位 順位の変動
1 西シドニー大学(Western Sydney University) オーストラリア 99.1 17
2 アリゾナ州立大学テンペキャンパス(Arizona State University (Tempe)) アメリカ 98.5 =9
3 ウェスタン大学(Western University) カナダ 97.8 52
=4 キング・アブドゥルアズィーズ大学(King Abdulaziz University) サウジアラビア 97.5 =46
=4 マレーシアサインズ大学(Universiti Sains Malaysia) マレーシア 97.5 =39
6 オークランド大学(University of Auckland) ニュージーランド 96.7 =9
7 クイーンズ大学(Queen’s University) カナダ 96.6 5
8 ニューカッスル大学(Newcastle University) イギリス 96.5 15
9 マンチェスター大学(University of Manchester) イギリス 96.4 1
10 北海道大学(Hokkaido University) 日本 96.2 101-200

※順位の数字に「=」がついている場合:同順位の大学あり

■THE University Impact Rankings 2022 総合ランキング(日本の大学のみ)上位10校

総合ランキングの中で、日本の大学の上位10校をご紹介します。

順位 大学名 設置区分 スコア 2021年の順位 順位の変動

10

北海道大学 国立 96.2 101-200
=19 京都大学 国立 94.9 101–200
101-200 広島大学 国立 82.1–88.5 101–200 =
101-200 慶應義塾大学 私立 82.1–88.5 201–300
101-200 神戸大学 国立 82.1–88.5 301–400
101-200 東北大学 国立 82.1–88.5 101–200 =
101-200 筑波大学 国立 82.1–88.5 101–200 =
201-300 熊本大学 国立 76.9–82.0 401–600
201-300 九州大学 国立 76.9–82.0 NR (初)
201-300 名古屋大学 国立 76.9–82.0 201–300 =
201-300 岡山大学 国立 76.9–82.0 101–200
201-300 大阪大学 国立 76.9–82.0 201–300 =
201-300 立命館大学 私立 76.9–82.0 201–300 =
201-300 早稲田大学 私立 76.9–82.0 301–400

※順位がNR: 前回のランキングではランキング対象校でなかったことを示す
※順位の変動が「=」の場合:前回順位から変動なし

■THE University Impact Rankings 2022 各SDGのトップ大学

SDGs別のランキングにおいて、それぞれのSDGで1位を獲得した大学をご紹介します。

SDGs 1位の大学名/国名 スコア
SDG 1 – No poverty ウェスタン大学(Western University)/カナダ 93.5
SDG 2 – Zero hunger 北海道大学(Hokkaido University)/日本 91.4
SDG 3 – Good health and well-being イラン医療科学大学(Iran University of Medical Sciences)/イラン 95.6
SDG 4 – Quality education オールボー大学(Aalborg University)/デンマーク 91.5
SDG 5 – Gender equality チェンマイ大学(Chiang Mai University)/タイ 81.9
SDG 6 – Clean water and sanitation 西シドニー大学(Western Sydney University)/オーストラリア 90.0
SDG 7 – Affordable and clean energy 復旦大学(Fudan University)/中国 89.4
SDG 8 – Decent work and economic growth ウィットウォーターズランド大学(University of the Witwatersrand)/南アフリカ 86.7
SDG 9 – Industry, innovation and infrastructure ブリティッシュコロンビア大学(University of British Columbia)/カナダ
ミュンヘン工科大学(Technical University of Munich)/ドイツ
トゥウェンテ大学(University of Twente)/オランダ
100.0
SDG 10 – Reduced inequalities キャンベラ大学(University of Canberra)/オーストラリア 95.7
SDG 11 – Sustainable cities and communities アリゾナ州立大学テンペキャンパス(Arizona State University (Tempe))/アメリカ 94.6
SDG 12 – Responsible consumption and production カンタベリー大学(University of Canterbury)/ニュージーランド 94.0
SDG 13 – Climate action タスマニア大学(University of Tasmania)/オーストラリア 90.4
SDG 14 – Life below water アリゾナ州立大学テンペキャンパス(Arizona State University (Tempe))/アメリカ 97.9
SDG 15 – Life on land アリゾナ州立大学テンペキャンパス(Arizona State University (Tempe))/アメリカ 97.7
SDG 16 – Peace, justice and strong institutions マレーシアサインズ大学(Universiti Sains Malaysia)/マレーシア 96.4
SDG 17 – Partnerships for the goals リバプール大学(University of Liverpool)/イギリス
マレーシアサインズ大学(Universiti Sains Malaysia)/マレーシア
100.0

今年のランキングのトピックス

世界ランキングでは、西オーストラリア大学がTOP、アジアも躍進

国際的にSDGsへの関心が高まり、また世界中の高等教育機関もSDGsを重視するようになったことを反映して、2022年のインパクトランキングへの参加大学は1,524校と前年から23%も増加し、過去最多となりました。うち、4つ以上の項目のデータを提出し、総合ランキングに入った大学は1,406校で、前年の1,117校から289校増加しています。

1位はオーストラリアの西シドニー大学。ランキングスタート時から常に20位以内で推移してきた同校ですが、前年の17位から躍進しついに1位を獲得しました。
2位はアメリカのアリゾナ州立大学テンペキャンパス(前年9位)。3位はカナダ・ウェスタン大学となっています。
4位は同率で、サウジアラビアのキング・アブドゥルアズィーズ大学(前年46位タイ)とマレーシアのマレーシアサインズ大学(前年39位タイ)でした。また総合10位には日本・北海道大学が前年101-200位から大きく順位を上げてランクインしています。

総合1位

西シドニー大学(Western Sydney University)/オーストラリア

オーストラリアのシドニーとその郊外に10のキャンパスを持つ公立大学。1892年創立と比較的新しい大学ながら、グローバルに評価される教育システムを整え、THEのYoung University Rankings 2022で31位にランクされるなど高い評価を受けています。100以上の学部、大学院コースが提供されており、実践的な体験と学術的知識を組み合わせた授業が展開されています。

SDG6(水・衛生)で1位、SDG12(生産・消費)で2位、SDG5(ジェンダー平等)で3位、SDG10(不平等の削減)で5位のほか、SDG14(海の豊かさ)で9位、SDG15(陸の豊かさ)で10位、SDG3(健康・福祉)で15位、SDG11(都市)で15位と、その取り組みは幅広い分野で高く評価されています。

総合2位

アリゾナ州立大学テンペキャンパス(Arizona State University (Tempe))/アメリカ

アメリカのアリゾナ州にある、1885年創立の州立大学。研究に主軸を置いており、アリゾナ大学と並んで同州を代表する総合大学です。5つの広大なキャンパスに、5万人以上の学生が在籍する米国有数の大規模校でもあります。US News&World Reportで2015年から7年連続で「全米で最も革新的な学校」第1位に選ばれており、ニューアメリカン大学のモデルを作り上げたと評されています 。

SDG11(都市)、SDG14(海の豊かさ)、SDG15(陸の豊かさ)で1位を獲得。そのほかにもSDG13(気候変動)で4位、SDG1(貧困)で6位、SDG6(安全な水)で7位、SDG16(平和・正義)で9位と、4つの分野でトップ10に入っています。

総合3位

ウェスタン大学(Western University)/カナダ

オンタリオ州ロンドンにある州立大学。1878年に創立された歴史ある大学で、かつてはウェスタン・オンタリオ大学として知られていましたが、2012年にブランド変更プロセスを経て、一般にウエスタン大学と呼ばれるようになっています。カナダを代表する研究集約型大学の1つとされ、最先端の研究施設が整っています。また、ゴシック様式の古い建物物や豊かな緑に囲まれたキャンパスは、カナダでもとくに美しい大学と言われています。

SDG1(貧困)で1位、SDG2(飢餓)で2位、SDG14(海の豊かさ)で2位、SDG16(平和・正義)で4位と、4分野で世界のトップ5にランクイン。17の目標のうち、13のSDGでランキングを向上させ、前年52位からジャンプアップを達成しました。

トップ100に入った大学の数はイギリスが最多で20校。次いでオーストラリアが17校、カナダが16校。さらにニュージーランドが7校と続きます。

トップ10には、カナダとイギリスがそれぞれ2校ずつ、オーストラリア、オーストラリア、サウジアラビア、マレーシア、ニュージーランド、日本からそれぞれ1校となっています。

このランキングはトップ層の順位が大きく変動するのが特徴とも言われており、今回のトップ10の中で前年も10位以内だったのは、2位のアリゾナ州立大学テンペキャンパス、6位のオークランド大学、7位のクイーンズ大学の3校のみ。

トップ20までを見ると、日本の2校(10位・北海道大学、19位タイ・京都大学)のほか、サウジアラビア、マレーシア、韓国、タイ、インドネシアから各1校が新たにランクインしており、アジア勢の台頭が目を引く結果となりました。

日本の大学では北海道大学、京都大学がトップ20入り

日本からは世界で2番目に多い84の大学が参加し、そのうち76校が総合ランキングに入りました。トップ200へは7校がランクインしており、アジアではタイと並んで最多となっています。

総合ランキングで日本のトップは10位の北海道大学(前年101-200位)。次いで、19位タイに京都大学(前年101-200位)が入りました。過去3回の発表では、日本勢最上位が2020年の北海道大学の76位だったことを考えても、2校そろってのトップ20入りは大躍進と言えるでしょう。

北海道大学はSDG2(飢餓)で1位を獲得。SDG14(海の豊かさ)17位、SDG15(陸の豊かさ)18位タイ、SDG17(パートナーシップ)12位タイなどで総合スコアを伸ばしました。
京都大学はSDG2(飢餓)で3位、SDG9(イノベーション)で16位タイ、SDG14(海の豊かさ)で15位と、3つのSDGでトップ20に入りました。この2校を含め、14校が総合ランキングの300位までにランクインしています。

各SDGごとのランキングでトップ100までを見てみると、SDG2(飢餓)で11校がランクインし、日本の強みと言える分野になっています。そのほかは、SDG14(海の豊かさ)で9校、SDG6(水・衛生)で8校、SDG1(貧困)で7校などとなっています。


THEのチーフ・ナレッジ・オフィサーであるフィル・ベイティ氏は「THEインパクトランキング」について、「社会の改善にどう貢献しているかという観点から大学の卓越性を再定義するもの」と説明。「世界中の大学コミュニティが自らの社会改善へのインパクトを測定し、SDGs達成のためのベストプラクティスを紹介していることは感動に値する。学生だけでなく政府も大学にこうしたコミットメントを求めるようになっていて、その要請は今後さらに強まるだろう」とコメント。また、欧米の著名な大学以外の大学が上位に多くランクしていることについて、「大学の多様性を示し、進学先の選択肢を広げていることが非常に喜ばしい」と述べています。

大学という機関の役割が研究や教育にとどまらず、国や地域コミュニティへの貢献、さらには世界の諸問題の解決に貢献することにまで広がりを期待されている現代において、国連のSDGs(持続可能な開発目標)に対する大学の貢献度を測定する世界で唯一のこのランキングへの注目度は非常に高まっています。総合ランキングだけでなく、各SDGについての関心も高くなってきています。世界が直面する複雑な問題についての研究に力を入れて取り組んでいる大学がわかるため、大学の価値を考えるうえで今後ますます重要な指標となっていくはずです。

大学の多様性を浮かび上がらせ、大学ブランディングの強力な要素となりうるこのインパクトランキングを、単なる順位付けではなく、「社会貢献」という観点で国内外の大学を見る1つの物差しととらえると、大学選びの幅が広がっていくでしょう。


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※この記事でご紹介している内容は2022年6月3日現在の情報に基づいています。

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