海外大学進学情報

【’22/6/17更新】2024〜SAT®がデジタルベースに!今年の海外大入試での採用状況は?

2020年前半から始まった世界的な新型コロナウイルスの感染拡大によって、アメリカでは学校の休校や標準学力テスト中止などが相次ぎました。その混乱の影響が残り、2021-2022年度のアメリカの大学の多くでは、出願要件としてSAT®やACTのスコア提出が「必須とされない」対応が続くことになりました。

現在、コロナによる影響は少なくなったものの、SAT®やACTなどの標準学力テストそのものに対するアメリカの大学の姿勢は、コロナ禍前と比べると変化がみられるようになっています。今後、SAT®やACTなどは、アメリカの大学入試でどう扱われていくのでしょうか?SAT®の最新情報なども含めて、見通しや対策をお伝えします。

【'22/6/17更新】2024〜SATがデジタル化。海外大入試での採用状況は?

アメリカの大学入試で広く使われているSAT®
2024年までにデジタルに完全移行へ

SAT®(エス・エー・ティー)は、アメリカの非営利法人「College Board®」が主催する、アメリカの大学進学希望者を対象とした標準学力テストです。もともと、地域や学校間で差の大きかったアメリカ国内の生徒の学力を一定の基準のもとで評価する目的で導入されたもので、留学生だけに義務付けられるTOEFL®テストなどの英語テストとは違い、すべてのアメリカの大学進学希望者を対象とした共通試験となります。SAT®は、ACT(American College Test)と並んで、アメリカで最も広く採用されている標準学力テストの1つで、College Board®によると2020年度には「175の国と地域で220万人以上の学生が受検した」とされています。

2022年1月、College Board®は2024年までにSAT®を完全にデジタル化することを発表しました。アメリカ以外のテストセンターでは2023年3月から、アメリカ国内では2024年の春からデジタルテストへ移行する予定とされています。

新しく実施されるSAT®のデジタルテストは、従来通りの会場受験型であることに変更はなく、自宅受験はできません。受験生は自分のノートパソコン・タブレット、もしくは学校 (受験会場) から貸し出されるデバイスを使用してテストを受けます。受験会場にデバイスの設置がない場合は、試験当日に主催者側(College Board®) からデバイスを借りることも可能です。

なお、デジタル化と同時にテスト内容等についていくつかの変更点があります。

<予定されている主なSAT®の変更点>

1)試験時間の短縮

現行のSAT®は「Reading(65分)」「Writing and Language(35分)」「Mathematics(80分)」の3つのテストで構成され、全体で3時間(180分)かかっていますが、今回の変更で2時間に短縮される予定です。

2)出題方法の変更

・現行では長文を読んで複数の設問に答える形式ですが、デジタルテストでは文章が短くなり、設問も各文章に対して1つに。より幅広いトピックから出題されるようになります。
・受験者の解答に応じて、後続の問題の難易度がセクション単位で変わるアダプティブ型になります。

3)電卓の使用

現行のMath Sectionは、電卓使用不可の問題と電卓を使用できる問題がありましたが、すべての問題で計算機の使用が可能になります。

4)スコア公表までの迅速化

現状ではSAT®のスコアを受け取るまで数週間~1カ月程度かかっていますが、デジタル化されると数日以内に結果が分かるようになります。

College Board®によると、試験時間は短くなるものの、出題方法の変更等によって各問題により多くの時間を割けるようになるとのことです。(試験科目の変更はなし)

また、現在のSAT®は原則として年に7回程度(受験日は土曜日)実施とされていますが、デジタル化により年間の試験回数はフレキシブルになる予定です。受験できる機会が増えると予想されますが、詳細については未発表となっています。

出願時にSAT®などのスコア提出をオプションとする動きが
アメリカの大学で加速

College Board®の大学進学適性評価担当 副社長 Priscilla Rodriguez氏は、今回のSAT®の変更について声明で「デジタルテストは、受験しやすく、実施しやすく、より(能力評価に)適したテストになる」と述べています。テストのデジタル化、試験時間や結果公表までの期間の短縮など、これまでの形式と比べると今回の変更はある程度、受験生の負担を軽減するものとなるでしょう。教育関係者や学生のニーズに応えるこうした動きは、アメリカの大学の中で近年、顕著となっている「テスト・オプショナル」ポリシーの導入に伴うSAT®の受験離れを抑える狙いがあると見られています。

コロナ禍前まで、アメリカの大学に出願する際はテスト要件としてSAT®またはACTのスコア提出が必須とされていることが一般的でした。しかし2020年3月以降、新型コロナウイルスの感染拡大による影響により、アメリカの多くの大学で出願時のSAT®/ACTに関する通常のテスト要件を停止する動きが拡大。最終的に、2020-2021年の大学入試ではハーバード大学をはじめとしたすべてのアイビーリーグの大学やスタンフォード大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)などのトップ校を含む全米の4年制大学の3分の2以上が、出願要件でSAT®/ACTのスコア提出を「必須としない(提出の義務はない)」とするテストオプショナルの方針を採用しました。

その後も多数の大学でテストのスコア提出をオプションとする対応が続き、非営利機関の米国公正公開試験センター(FairTest)によると、2022年秋入学の出願要件でSAT®/ACTなどのスコア提出を任意とした大学は、全体の76%超に相当する1,785校以上と過去最多になりました。
2023年秋学期入学希望者の出願においても、すでに全米の大学の半数以上がSAT®/ACTスコア提出を任意(テストオプショナル)とすることを表明しています。

もともと、こうした標準学力テストに対しては人種や家庭の所得等による格差などの問題が指摘されており、大学の入学者選考の要件として適切かどうかという議論がアメリカ国内で続いていたという背景がありました。それにコロナ禍が拍車をかけた格好になり、「SAT®/ACTのスコアを提出しなくても出願できる」大学が急増。加えて、FairTestによると、2021年までにSAT®/ACTのスコア提出を任意とした大学では全般的に出願者数が増加したと同時に、学力レベルの高い学生が出願する傾向があり、出願者の多様性も拡大するという結果に。この実績を受けて、一時的な措置としていたテストオプショナルを永続的に実施することを決定する大学も出てきました。こうした動きにより、現在のアメリカ大学入試ではテストのスコア提出を必須としない流れが加速しているものと考えられます。

ただし、マサチューセッツ工科大学(MIT)など一部のTOP大では、すでにSAT®/ACTを再び実施すると表明しているところもあります。今後、どれぐらいの大学がSAT®/ACTのスコア提出を復活させるか、見通しは不透明なのが現状といえるでしょう。

テストのスコア提出が必須でなくなったことで
出願者の増加・多様化につながった

SAT®/ACTなどのテストがオプションになったことで、入学者の選考にはどのような影響があったのでしょうか。

まず、大きな変化としては出願者数の増加です。前述した通り、テストオプショナルの方針をとった一流と言われる私立大学・州立大学では出願者が急増しました。たとえば2020年入試では、私立大学だとハーバード大学への出願数は43%増加、ペンシルベニア大学への出願数は30%以上増加、MITにいたっては65%強も増加したと発表されています。
州立大学だと、アメリカ最大規模のカリフォルニア大学群で18%増の25万件の出願数になったほか、バージニア大学の出願は17%増、ジョージア大学への出願は40%増など、軒並み出願数が増加。もともと狭き門とされてきた名門大学の競争率が、さらにアップするという結果になりました。

さらにもう1つの変化を挙げるとすれば、出願者の多様化だと言われています。出願時のテスト要件がなくなったことで、従来であればテストスコアが足りずに出願ができなかった層がいろいろな大学にチャレンジできるようになったため、大学側としても様々な個性や能力を持った学生に出会えるようになりました。エッセイや課外活動歴、高校の成績などがより重視される選考が行われるようになり、受験生にとってはある意味でチャンスが広がったと捉えることもできるでしょう。

留学生にとってはSAT®スコアが武器になることも。
「テストオプショナル」の場合は、積極的にスコア提出しよう

それでは、アメリカの大学への進学を目指す場合、留学生としては現時点でSAT®などの標準学力に対して、どのような姿勢で臨めばよいでしょうか?

ここで確認しておかなければいけないのは、「SAT®/ACTのスコアを提出しなくても出願できる」という大学の方針には、いくつかの種類があることです。

◆テストオプショナル(Test Optional):テストのスコア提出は任意

◆テストブラインド(Test Blind):合否判定でテストスコアはまったく考慮しない

◆テストフレキシブル(Test Flexible):SAT®/ACTの代わりに別のテストスコアを提出可能

FairTestによると、2021年2月の時点でテストブラインドを採用していた大学は、カリフォルニア工科大学やカリフォルニア大学群、リードカレッジなど69大学。ほとんどの大学はスコア提出が任意とされている「テストオプショナル」となっています。

テストオプショナルの場合、SAT®/ACTのスコア提出を「必須としない」だけで、学生はテストスコアを出すか出さないか選択することができます。もちろんテストスコアを提出しなくても出願はできますが、学生が任意で提出したスコアは合否判定に反映される傾向があります。とくに名門とされるTOP大ではその傾向が強いことが、2021年秋入学の入試結果からも明確になってきています。オプションではあっても、名門大学であればあるほどSAT®/ACTのハイスコアを提出した学生に高評価が与えられる傾向があるのは間違いありません。

ネイティブでない学生にとってSAT®/ACTはかなり難しく、対策に苦労する方も多いですが、逆に言えばSAT®/ACTは留学生にとっては武器にもなりうるテストです。アメリカとは文化・環境が違う日本の高校では、成績の付け方や課外活動の機会などがどうしても異なるため、選考でどう評価されるかは出願してみないとわからない部分も大きくなってしまいますが、SAT®/ACTであれば世界のどこで受けても条件は同じ。高いスコアを獲得できれば合否判定で有利に働くことが期待できます。

大学入学後の授業のことを考えてもSAT®/ACT対策で身につけたことは必ず生きてきますので、アメリカの大学への進学を目指すなら、志望校のテストポリシーを確認したうえでぜひSAT®(もしくはACT)を受検してみましょう。スコアが基準以上取れた場合は、合否を判断される材料を増やすという意味で、必ずスコア提出をすることをおすすめします。

また、もし志望校がテストブラインドの方針をとっていたとしても、各種団体などの「奨学金」の選考に、SAT®スコアが必要となることも多々あります。奨学金を獲得して留学することを考えているのであれば、早めに募集要項等をよく確認しておきましょう。いくつかの奨学金にチャレンジすることを考えると、SATの対策は引き続き必要だと考えて、準備していくことが賢明といえるでしょう。


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※この記事でご紹介している内容は2022年6月17日現在の情報に基づいています。

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