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新しい大学の形、ミネルバ大学とは

2014年に創立されたミネルバ大学をご存知でしょうか?まだまだ日本では名前を知られていないかもしれませんが、キャンパスがなくオンライン講義のみ、企業などとの協働プロジェクトの推進など、従来の大学とは大きく異なるユニークなスタイルが、いま世界で大きな注目を集めている大学です。創立からわずか4年で、ハーバードより入るのが難しいと囁かれるほどひそかな人気校となったミネルバ大学。世界中の学生を惹きつけてやまない魅力の一端をご紹介しましょう。

ハーバード大より難関と言われる人気のミネルバ大学

キャンパスのない大学 4年間で7都市を移動しながら学ぶ

ミネルバ大学(Minerva Schools at KGI)は、Ben Nelson氏が設立した実験的高等教育機関であるミネルバ・プロジェクト(Minerva Project)が、Keck Graduate Institute(KGI)をパートナーとして2014年9月に開校したアメリカの私立大学です。サンフランシスコに拠点を置くミネルバ・プロジェクトは、「高等教育の再創造」を掲げて創立しました。全寮制の4年制総合大学ですが、特定のキャンパスは持っていません。学生は1年次に住むサンフランシスコに始まり、ソウル、ハイデラバード、ベルリン、ブエノスアイレス、ロンドン、台北と4年間で世界7都市に移り住みながら、オンラインで授業を受講します。
ミネルバ大学の第1期生は29名でスタートし、現在では600名を超える学生が在籍しています。開学2年目には98ヵ国から1 万1 千人以上の出願者があり、合格率はわずか2.0%に。入学希望者は増え続け、今では毎年世界中から2万人以上の受験者が集っています。設立して4年ほどと非常に新しい大学ながら、世界の名立たる名門大学の合格を辞退して進学する学生がいることでも注目されています。

■ミネルバ大学の主な特徴

  • (1) 講義は全てオンラインによるアクティブラーニングにより実施
    講義を受ける場所は特定されておらず、パソコンとインターネット接続環境があればどこでも受講可能
  • (2) 20名以下の学生による少人数制クラス
  • (3) 世界から集う学生が全寮制で学びあう (およそ80%が留学生)
  • (4) 4年間で世界7都市をめぐる(各都市で寮生活を行う)
  • (5) 学生は各地でインターンシップに参加する
  • (6) 授業料がリーズナブル
    1,2年次は12,950ドル、3,4年次は10,950ドル(寮費等を含めると22,950~24,950ドル)
    ※アメリカトップクラスの大学の1/4~1/3(例:ハーバード大学の授業料は約46,000ドル)
  • (7) 合格率は2%未満とされ、世界で最も合格率の低い大学とも言われている

講義は全てオンラインによるアクティブラーニング

世界の各都市で学生たちはみな寮での共同生活を送っていますが、大学の講義はすべてオンラインで行われます。ディスカッション中心の授業や、企業や政府、自治体と協働して進めるプロジェクトなどを通じて課題解決の手法を学びます。オンライン講義とはいっても、不特定多数に一方通行の講義をネットで遠隔配信するようなものではありません。授業は18名ひとクラスの少数編成のセミナー形式で行われます。学生同士のディスカッションを中心に授業は進みます。すべての授業は録画されているため何度でも見返すことが可能で、音声が自動筆記で即時にテキスト化されるので、講師からのフィードバックも早く確実になるなど、学生たちの深い学びが効率良く進められるようになっています。

考え抜かれ、計算されつくした独自のカリキュラム

ミネルバ大学の4年間のカリキュラムは、理解の幅と専門知識の深さのバランスがとれるように明確に設計されています。個人技能である「クリティカル(批判的)思考」と「クリエイティブ(創造的)思考」、対人技能である「プレゼンテーション能力」と「コミュニケーション能力」を合わせた、「4つのコア技能」を、継続的かつ体験的なプロジェクト学習、パフォーマンス評価や学習データ分析に基づいた素早いフィードバックや適切なアドバイスを通じて、習慣的・経験的に身につけられるようにデザインされています。

■カリキュラムを組み立てている4つのコア技能

  • 1.クリティカル(批判的)思考 : どうすれば社会の重要な課題を発見できるか
  • 2.クリエイティブ(創造的)思考 : 課題に対するクリエイティブな解を見つけられるか
  • 3.プレゼンテーション能力 : 解を実現可能なレベルに落とし込めるか
  • 4.コミュニケーション能力 : 課題と解について人に上手く伝達できるか

例)1年次:サンフランシスコ
教養課程のような共通の授業。まず物事の見方の 120パターンの癖を矯正し、4つの学びの基本コンセプトを学ぶ。

  • ・分析   複雑な課題を解決する統計、論理、意思決定判断、シミュレーションなど
  • ・複雑系  相互作用、複数の因果関係、コミニュケーションなど
  • ・実証分析 問題を効果的に組み立て、仮説、検証など
  • ・修辞学  多様なコミュニケーション方法を探る

これらの過程を経て、それぞれの専攻を2年次に決定し、より専門化されたコースで学びを深めていきます。専攻は「芸術・人文科学」「ビジネス」「計算科学」「自然科学」「社会科学」の5分野です。3、4年生では、自分の専門の中から「何か新しいものを生み出す」という課題を与えられ、多くの時間を自分の卒業プロジェクトに費やします。

また、ミネルバ大学は4年間で世界の7カ国を移動するため、各学期(各都市)で学ぶ内容が変わるのもカリキュラムの大きな特色です。

  • 1年目 – サンフランシスコ(米国)
  • 2年目 – ソウル(韓国)、ハイデラバード(インド)
  • 3年目 – ベルリン (ドイツ)、 ブエノスアイレス (アルゼンチン)
  • 4年目 – ロンドン(英国)、台北(台湾)

学生たちはそれぞれの場所で生活しながら、滞在都市にある最新の研究施設や芸術施設、図書館などを利用し、また現地の企業、行政機関、市民団体等との協働プロジェクトやインターンシップを経験することができます。基礎学習を経て専攻を選び、深まっていく年次ごとの学びにあわせて、どの都市でどの年次を迎えるのかも考えられています。都市ごとに学びのテーマがあり、実際に暮らしている各都市に即した幅広い内容の事柄を学ぶことができるのが他の大学とは大きく異なる点の1つと言えるでしょう。

入学試験に定員はなし
相対評価ではなく一定の要求水準を超えれば合格

ミネルバ大学への出願者数は年を経るごとに増えていますが、学生に要求される水準がとても高く非常に狭き門と言わざるをえません。ただし、「定員がない」ため、決められた枠を優秀な学生同士で取り合っているわけではないことは要注目。相対評価で定員数の学生を選ぶのではなく、一定のハードルのような水準を超える学生は全員合格となりますが、それでも合格率は2%前後という難関です。

ミネルバ大学の入試(出願方法)は以下のような独自の3部構成になっています。SAT®や一般的なエッセイなど、他の大学のような標準化されたテストの点数は必要ありません。

●パート1: (Who You Are)

ミネルバ大学のWebサイトで名前、メールアドレスや学歴などの基本情報を記入して出願用アカウントを作成。

●パート2: (How You Think)

オンラインで出願者の様々な側面に関して考え方を問う独自の問題が出題される。出題分野はCreativity、Mathematics、Understanding、Reasoning、Writing、Expressionの大きく6つ。設問には制限時間以内に、その場で答えなければならない。

●パート3: (What You Have Achieved)

中学、高校、高校卒業後の課外活動等について、簡潔かつ可能な限り定量的に自己評価し、アピールする。

世界中から才能ある入学志願者が殺到する隠れた超人気大学
共に学ぶためには高い英語力が必要

これまでの「大学」の概念を覆し、革新的な高等教育を展開するミネルバ大学。大学ランキングには出てきませんが、世界的な名門大学を超える優秀な人材がこぞって入学を希望するほど、評価も人気も年々高まっています。他に類を見ない教育システムを有し、国際的な環境で、才能ある学生たちと学べる機会は非常に魅力的と言えるでしょう。ただ、入学者に求められる能力も非常に高いレベルにあり、相当な難関であるのも間違いありません。。英語で行われるオンラインのディスカッション中心の授業に参加するためには、当然のことながら、入学時点から非常に高い英語能力が求められます。出願の際にTOEFL®テストやSAT®のスコアは要求されませんが、ミネルバ大学で学びたいのであれば、ネイティブレベルの英語は必須。まずはしっかりと英語力を身につけることを目指しましょう。

※この記事でご紹介している内容は2019年1月25日現在の情報に基づいています。

※この記事は、旧GLCウェブサイトの「グローバル海外進学コラム」2019年1月25日に掲載されたものです。

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