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学生の柔軟な学びを可能にする「ダブルメジャー制度」とは?


日本ではまだ、あまり一般的ではない専攻制度である「ダブルメジャー」。現在、日本の多くの大学は、入学後に主となる専攻を1つ選択し、4年間かけて専門的に学んでいくシステムをとっています。これに対し、ダブルメジャーは1つの学部に在籍しながら2つの分野を専攻することができるシステムで、専攻に対する考え方が非常に柔軟な海外では多くの大学で提供されている制度です。あまりなじみのないダブルメジャー制度について知り、海外大学の学びにおける柔軟性を感じてみましょう。

柔軟な学びを可能にする海外大学のダブルメジャー

ダブルメジャー制度とは?

「ダブルメジャー」(double major)とは、大学で複数の異なる専攻分野を同時に主専攻(メジャー)として学ぶこと、また、そのような学び方を可能にする教育制度のことを指します。日本では二重専攻や複数専攻などと呼ばれています。学生は同時に複数の学問分野を学ぶことができるため、様々な分野で視野を広げ、幅広い知識を得ることができるという利点があります。
単一の学問分野にしばられず、異なる領域にまたがって深い知見を身につけることにより、広い視野や柔軟な発想を養うことを重視する海外の大学では一般的な制度で、多くの場合、1つの学部の中で同じ学位(学士号)を取得する2つの分野を専攻できるようになっています。2つの学位を取得することが可能な制度はダブルディグリー(二重学位)制度といい、こちらも多くの大学で用意されています。

ダブルディグリー(二重学位)制度との違い

2つ以上の学問分野を学ぶことができるという点で、ダブルメジャーと似たような制度に、ダブルディグリー制度がありますが、この2つの制度は基本的な部分が異なります。

●ダブルメジャー

通常、ダブルメジャーは、1つの大学の1つの学科を基盤とし、同じ学位(例:BAのみ)を取得することになる2つの専攻を勉強することを意味する。2つの専攻(専門分野)を学ぶが、基本的に、取得できるのは1つの学士号(1つの学位)のみ。

●ダブルディグリー

通常、2つの異なる学校を拠点とし、2つの異なる学位(例:BSとBFA)を取得することになる2つの専攻を学ぶことを意味する。2つの異なる専攻(専門分野)で、2つの学位(2つの学士号、または学士号と修士号など)を取得できる。

アメリカを例にとると、4年制大学を卒業した際に取得できる学位(学士号;bachelor’s degree)はいつくかありますが、基本的にほとんどの専攻は、「Bachelor of Arts (BA:文学士などと呼ばれる)」か「Bachelor of Science (BS:理学士などと呼ばれる)」に分類されます。「Bachelor of Arts (BA:文学士)」には、語学、地域研究、音楽、哲学、政治学、心理学、歴史学、地理学、一部の化学・物理学など多数の専攻が含まれ、「Bachelor of Science (BS:理学士)」には生物学、生化学、工学、看護学、応用数学、コンピュータ科学などの多数の専攻が含まれます。一部の専門的な分野では、専門的な学士号が授与されます(「Bachelor of Fine Arts (BFA:美術学士)」や「Bachelor of Business Administration (BBA:経営学士)」など)。
学位の詳細については、大学の学部構成等によるところもあるようですが、一般的には、たとえばダブルメジャーで英語と歴史学を専攻した場合でも、アジア研究と政治学を専攻した場合でも、取得できるのは「Bachelor of Arts (BA)」のみということになります。ただし、「B.A.in Historiography」「B.A.in Political Science」のように、専攻分野を学位に付記することはできるため、複数の専攻分野を学んだことはアピールすることが可能です。また、卒業に必要な単位は変わらず、Elective(選択科目)で取る単位をRequirement(必修科目)で単位が取得できることから、ダブルメジャーにしても勉強量が単純に倍になるというわけではありません。

これに対し、ダブルディグリーとして2つの異なる学位を取得(BAとBSなど)するためには、基本的には複数の大学・学部でまったく異なる学問分野を学び、それぞれの学位を取得する必要があります。2つの異なる学位の要件を同時に満たす必要があるため、通常の学部課程よりは時間がかかるのが一般的です。

ダブルメジャーにしても、ダブルディグリーにしても、やる気のある学生には、柔軟な制度が用意されているといってよいでしょう。

※ダブルメジャーの本来の定義は、1つの学部で複数の異なる専攻分野を履修することで、必ずしも複数の学位が得られるわけではありませんが、大学によっては、同一学部または大学内でまったく異なる分野を専攻し、2つの学位(学士号)を取得できる制度を提供している場合もあるようです。

ダブルメジャー制度のメリット

専攻について柔軟な考え方ができる海外の大学では一般的な「ダブルメジャー制度」には、いくつかのメリットが挙げられます。 まずはもちろん、自分が興味のある分野を幅広く学ぶことが可能であること。大学によっては、1つ目の専攻として自分が本来学びたい分野を選択しながら、もう1つの専攻として仕事に直結しそうなITやビジネス科目を組み合わせることもできます。2つの専門分野を学ぶことで、より多くの知識とスキルを身につけられるため、卒業後のキャリアの可能性が大きく広がることが期待できます。
さらに、複数分野を短期間で学べるよう、制度が整えられていることが多いのが特徴です。大学やプログラムによって制度はかなり違いますが、選択した2つの専攻分野の両方に同じ授業(単位)を卒業要件として適用できるようになっていることが多いようです。たとえば、両方の専攻分野で学位取得のために1年間の語学の授業が必須である場合、1つの語学クラスの受講で済むということになり、授業の負荷が若干軽減されるようになっています。ただ、両方の専攻に適用できる単位/クラス数に制限があることも多いため、大学ごとの制度をしっかり確認する必要があります。
また、ダブルメジャー制度を利用しても、通常の4年間の期間内に大学を卒業することができるのが一般的です。基本的には同一大学・同一学部での授業になるため、時間も学費も、1つの分野を専攻するのと変わらないという点は大きな魅力です。海外の大学の多くは入学時に専攻を決定する必要がなく、通常は3年次の初めまでに自分が専門的に学びたい分野を決定します。ダブルメジャーを選択する場合も、入学時点で決める必要がないのは学生にとっては嬉しいポイント。1~2年間、大学で学びながら自分の興味・関心を見極め、将来のキャリア設計も考慮に入れながら、必要であればダブルメジャー制度を使って複数専攻を学んでみるのもよいでしょう。

ダブルメジャーだと学生生活はかなりハードに
早めの目標設定が大切

ダブルメジャー制度はメリットがたくさんあり、非常に魅力的な制度。逆にデメリットと言えるような部分も当然あります。最大の難点は、シングルメジャーよりも大学での学びの負荷が大きいこと。それぞれの専攻を修了するための単位がある程度共通するように設定されている場合もありますが、当然すべてではないので、やはりシングルメジャーより多くの授業や課題をこなさなければなりません。学習面では、かなりハードな学生生活になると覚悟し、学位取得まで、学びの意欲を絶やさないことが必要です。
早い時期にダブルメジャー選択を決意すれば、そのぶん早く目的意識がもて、必要な単位取得に向けて計画的に動き出せる場合もあります。現時点で、海外大学に進学し、ダブルメジャー制度で幅広く学びたいと考えているなら、まずは自分が何を学び、どんな将来を目指したいのか、しっかり考えたうえで組み立てをし、早めの目標設定をしていくことが大切。あわせて、海外大学での学びの土台になる英語力もしっかり磨いておきたいものです。

※この記事でご紹介している内容は2019年5月3日現在の情報に基づいています。

※この記事は、旧GLCウェブサイトの「グローバル海外進学コラム」2019年5月3日に掲載されたものです。

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