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世界の大学が重視する海外「STEM教育」最新事情

次代を担う優秀なIT人材を育てるために提唱された「STEM教育」。分野の垣根を越えて総合的に学ぶことを通して、自ら課題を発見し、解決していく力を養うことを目的とした教育手法です。世界では1990年代から取り組んできた国・地域もある中で、近年は日本でも少しずつ知られるようになり、注目度が高まっています。
今回は、あらためてSTEM教育がどんなものか、またSTEM系プログラムのメリットを取り上げるとともに、海外の最新事情もご紹介します。

世界の大学が重視する海外「STEM教育」最新事情

世界に広がり、重視されるSTEM教育

STEMとは、「Science(科学)」「Technology(技術)」「Engineering(工学)」「Mathematics(数学)」の頭文字をとった言葉で、4つの教育分野を総称したもの。1990年代のアメリカが発祥とされます。上記4分野の知識や考え方を総合的に学ぶことで、科学やITの高いスキルを備え、今後のIT社会・グローバル社会に適応できる国際競争力を持った人材を育成することを目指す教育手法です。

アメリカでは、2009年に当時のオバマ大統領が演説で優先課題と強調したことで注目を集めるようになったと言われています。今後の経済成長には科学・数学などをベースとする科学技術分野が非常に重要であると考えられており、2013年にはSTEM教育に関する5か年の戦略計画を発表。年間30億ドルとい巨額の予算を投じ、国家戦略として全米でSTEM教育のプログラムが推進されています。

アジアで最もSTEMに力を入れているとされているのは、国家予算の20%近くを教育関連にあてているシンガポール。国営の「Science Centre Singapore」を設立して、子どもたちのために科学技術関連のアクティビティを多数提供。低学年からの専用プログラムも用意するなど、国を挙げてSTEM教育に取り組んでいます。

こうした動きは、現在では世界中に広がっています。プログラミング教育に力を入れており、幼稚園からデジタルスキル取得のためのカリキュラムを展開しているカナダや、産学連携により実践的な教育プログラムを大々的に実施しているオーストラリア。EU諸国やイギリスでもSTEM関連分野の人材確保の重要性が強く提言され、科学教育の底上げが図られていますし、中国、インド、インドネシアなどアジアの国々もSTEM教育に力を入れています。

STEMプログラムで注目される世界の大学の例

●カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)/アメリカ

付属機関であるローレンスホール科学教育研究所(Lawrence Hall of Science)で、GEMS(Great Explorations in Math and Science)と呼ばれるM幼児から中高生を対象とした科学・数学の参加体験型プログラムを開発。現在では世界に広がる取り組みとなっています。

●クイーンズランド工科大学(Queensland University of Technology)/オーストラリア

1989年にブリスベン市内中心部に創立された近代的な施設と設備を誇る公立大学。幅広い学部が提供されている中でも、Engineering(工学)分野に特に強く実践的な学びが特徴。産業界との強い連携によるインターンシップが充実しており、世界初のクリエイティブ産業学部も設置されています。

●チューリッヒ工科大学(ETH Zurich)/スイス

1854年、STEM分野を専門とする「ポリテクニック(職業教育に特化した高等教育機関)」として設立。現在では20を超える科学分野の学士課程を提供し、STEM分野で常に世界をリードする大学として高く評価されています。

STEM系学位を取得するメリット

STEM教育は「科学技術」や「IT技術」に秀でた人材を育成することを大きな目的としていますが、教育の狙いはそれだけではありません。STEM教育が注目されている大きな理由をご紹介しましょう。

①自ら学ぶ人になれる

STEM教育の本質は、AIが台頭すると考えられるこれからの社会で必要な批判的思考や創造性、自発的に学ぶ姿勢、判断力・問題解決力などを養い、「自ら学び、理解していく人材」を育てることにあります。

近年では、STEM教育を基盤としつつ、さまざまな様子を追加して派生した手法も生まれています。とくに注目を集めているものの1つが、STEMに「A」(Art(芸術)もしくはArts(リベラルアーツ・教養))を足した「STEAM教育」。芸術や教養分野の本質である「人間にとっての本当の豊かさを追求する」という哲学的な思考をテクノロジーと融合させた教育手法です。変化が激しく予測が困難な時代の中で、学んだり身につけたりした知識・技術を現実社会の問題解決に生かし、新たな価値を創造していくことを目指しており、多くの教育機関が「STEAM」プログラムの導入も進めています。

②世界的なSTEM人材への需要の高まりで就職に有利

ICTの発達により、IoTやAI(人工知能)、ビッグデータを用いた技術革新が進み、「第4次産業革命」とも言われる時代に突入している現代。たとえば国家戦略としてSTEM教育を推し進めるアメリカでは、すでに現在もSTEM関連分野の専門家に対する需要は過去最高水準にありますが、SHRM(Society for Human Resource Management:人材管理協会)によると2025年までに約350万人のSTEM関連職が未就労のまま残ると推定されています。またSTEM関連職は2017年から2029年にかけて8.8%成長し、平均時給の中央値は38.85米ドルになると予測されています。

つまりアメリカの現状だけ見ても、STEM関連分野を学び、学位を取得した場合、将来的な雇用と高収入が高い確率で約束されているということになるわけです。実際にアメリカの大学やカレッジの多くが提供する様々なSTEM関連プログラムは非常に人気で、2017年には学部生の5人に1人がSTEM関連分野で学士号を取得したという報告もあります(アメリカ国立教育統計センターによるレポート)。

③OPT(Optional Practical Training)の期間が延長できる

最近ではアメリカへの留学生の間でも、OPT(Optional Practical Training)の期間を24か月延長できる専攻分野としてもSTEMは注目を集めています。
OPTとは、学生ビザ(F-1)でアメリカの大学等に就学している留学生に対し、自分の専攻分野と関連のある職種にかぎり、アメリカに拠点を置く企業で実地研修を目的とした就労を許可する制度です。期間は通常、12か月間(通算)。簡単に言うと、学生ビザのまま卒業後も1年間は有給または無給で働くことができる制度ということになります。

このOPT制度において、STEM分野(科学、技術、工学、数学)の学位取得者は、さらにいくつかの要件を満たせば卒業後のOPTの期間を24か月間延長することができるようになっているのです(STEM OPT Extension)。つまり、留学してSTEMの学位を取得すれば、卒業しても3年間はアメリカで就労が可能ということになります。こうした制度も、留学生にとってはSTEM学位を取得するメリットと言えるでしょう。

世界の大学のSTEM教育最新事情

サイモンフレーザー大学(Simon Fraser University:SFU)/カナダ

サイモンフレーザー大学は、グリーンキャリア(環境の保全や保護、またサステナビリティに貢献する高い専門知識を要する仕事や働き方)において、多くの卒業生が素晴らしい成果をあげていることで有名です。同分野のランキングで、カナダの総合大学としては過去14年間で13回もトップに君臨し、環境科学プログラムは「傑出したプログラム」として注目されています。

同大学の環境プログラムの特徴は、学生が行動を通して学ぶ手法を重視していること。教授と一緒に研究やプロジェクトに取り組み、学問分野での確かな理解を深めた上で、それを実社会の問題に適用し、関連するスキルを身につけ、新しい人脈を作っていきます。
環境学部では、「環境科学」「資源および環境管理」「物理地理学」「地球環境システム」などの学士号を取得することができます。

オレゴン大学(University of Oregon)/アメリカ

オレゴン大学は、芸術科学部(College of Arts and Sciences)が高い生産性と影響力を持つ研究活動を行っていることで有名ですが、最先端の施設を持つ同大学ではSTEM系学部も同様に非常に高い評価を受けています。

研究と学生へのトレーニングを組み合わせた、発見を重視したプログラムが特徴で、それぞれの分野で新しい知識を創造し、世界を広げています。 自然科学分野のプログラムとしては、生物学、化学と生化学、コンピュータと情報技術、データ科学、地球科学、学際科学、人体生理学、数学、神経科学、物理学、心理学など幅広い分野が提供されています。

ノースカロライナ大学チャペルヒル校(University of North Carolina at Chapel Hill)/アメリカ

ノースカロライナ大学チャペルヒル校では、地球・海洋・環境科学科(EMES)が非常に卓越した成果を上げています。2021年7月1日に、3つの学問ユニットが統合された形で設立されたEMESは、学際的な研究が強化されると同時に、カリキュラムの提供が拡大し、学生の体験学習の機会が促進されているのが特徴です。同学科には地球科学専攻、環境科学専攻、海洋科学専攻などがありますが、すべてのプログラムが研究に基づく学習を通じて、自然界の探求と発見を促進することを目指しています。

たとえば、地球科学と海洋科学の研究をまとめることで、EMESでは地球を支配し、多様な生態系を形成し、生命を維持し、環境変動を引き起こす地球と海洋のプロセスを理解することができるようになりました。こうした学びや研究を通して、学生は科学の基礎、批判的思考力、学際的な視点を身につけることができるようになっています。


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※この記事でご紹介している内容は2023年2月24日現在の情報に基づいています。

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