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リベラルアーツカレッジのコンソーシアムが魅力的!


本場アメリカのリベラルアーツカレッジは知る人ぞ知る名門カレッジも多く、少人数で目の行き届いた教育を受けられることが魅力。近年、日本でも少しずつ知られるようになり、取り入れる大学が徐々に増えてきています。とはいえ、まだリベラルアーツの考え方が一般的ではないため、「コミュニティが狭く、受講できるクラスについても選択肢が狭い」という印象を持つ人が多のではないでしょうか。しかし実際には、カレッジ同士がコンソーシアムと呼ばれる協力体制を組んでおり、学生はお互いのカレッジで授業を取れるなど自由度の高い科目選択が可能である場合が多くあります。今回は、アメリカのリベラルアーツカレッジのコンソーシアムについてご紹介します。

アメリカのリベラルアーツカレッジが組むコンソーシアム

リベラルアーツカレッジとは

古代ギリシアの基礎的な学問領域「自由七科」が起源であると言われるリベラルアーツ(Liberal Arts)。現代のリベラルアーツ教育は、細かな専門分野を定めずに、リーダー・知識人としての人格形成の基盤となる自然科学、人文学、芸術など様々な分野を学び、幅広い教養を身につけることを目指しています。アメリカのリベラルアーツカレッジ(Liberal Arts College)は、リベラルアーツ教育による広い視野と豊富な教養・知識を身に付け、真のリーダーシップがとれる人材を養成することを目的とした四年制大学です。
リベラルアーツカレッジの大きな特徴は、研究に力を入れている総合大学(University)が重視するような1つの分野での実用性・専門性よりも、幅広い知識や教養の獲得をベースとした学生への“人間教育”を重視している点です。学生参加型の授業が中心で、人文・社会・自然科学や芸術など多種多様な学問に、自分の興味に合わせて自由にチャレンジすることができます。
現在、アメリカ全土にあるリベラルアーツカレッジは600校ほど。人数規模も500〜3000人程度と小規模なものが多く、ほとんどが全寮制です。規模の小ささゆえ、学生一人ひとりへのきめ細かい指導が行き届いているのも特徴の1つ。自然豊かな落ち着いた環境のキャンパスで生活しながら、アットホームな雰囲気のクラスで学ぶことができます。教授と生徒の距離が近く、生徒間においても密接な関係が築くことができると言われています。

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アメリカ・リベラルアーツカレッジの代表的なコンソーシアム紹介

「コンソーシアム」とはもともと連合や協会、組合といった単語で、複数の企業などの団体が1つの事業などを協力して行うため、共同で出資して作る共同事業体という意味合いで使われる言葉。大学におけるコンソーシアムとは、個別に取り組むと手間や費用がかかる事業を共同で行うために、近隣の大学などが集まった組織のことを指します。日本では、加盟する大学間で授業の相互受講・単位互換をしたり、協力してインターンシップの派遣先を探したりしているケースが多く見られます。
アメリカでは、19世紀後半以降、大学間の自発的な連携組織としてコンソーシアムが結成され、単位の互換だけでなく、教員・学生の交流、施設・設備の共同利用などを推進してきました。現在でも複数のカレッジによって形成されたコンソーシアムが数多く存在し、メンバー大学間で授業や課外活動、食堂や図書館等の施設といったリソースなどを共有しながら、学生に対する教育や個々の大学の運営を充実・強化するべく協力しあっています。

アメリカのリベラルアーツカレッジの代表的なコンソーシアムをいくつかご紹介しましょう。

■The Claremont Colleges

カリフォルニア州クレアモントにある5校のリベラルアーツカレッジ(大学)と2校の大学院からなるコンソーシアム。属している大学は、創始校であるポモナ・カレッジ(Pomona College)、ハーベイ・マッド大学(Harvey Mudd College)、クレアモント・マッケナ大学(Claremont McKenna College)、ピッツァー大学(Pitzer College)、スクリプス大学(Scripps College)。大学院はクレアモント大学院大学(Claremont Graduate University)、ケック応用生命科学大学院大学(Keck Graduate Institute of Applied Life Sciences)。約7700名の学生、約700名の教員、さらに2000名近いスタッフが在籍している非常に大きなコンソーシアムです。 学部生は、コンソーシアム全体の2000を超えるコースから受講選択をすることが可能で、学生たちは毎年、自分の大学以外のキャンパスの授業をおよそ6000コース受講しています。授業の相互登録以外にも、カリフォルニア州の私立教育機関の中では3番目の規模を持つコンソーシアム独自の図書館や、様々な学生支援サービスの共有など、広範囲にわたる大学間協力を行っているのが特徴です。

■Five College Consortium

マサチューセッツ州にある4つの私立リベラルアーツカレッジと、1つの州立大学のアマーストキャンパスで構成されているコンソーシアム。加盟大学はアマーストカレッジ(Amherst College)、ハンプシャーカレッジ(Hampshire College)、スミスカレッジ(Smith College)、マウントホリヨークカレッジ(Mount Holyoke College)、そしてマサチューセッツ大学アマースト校( the University of Massachusetts Amherst)の5校です。 共同の自動図書館システムや授業の相互登録などを含む教育的・文化的なリソースと施設の共用、共同の学部や、学生・教員が多文化主義や多様性などについて探求するプログラムの設置などが行われています。各キャンパス間には無料の学内バスが運行されており、学生たちは30分程度で他大学の授業や活動に参加することが可能となっています。

■Quaker Consortium

ペンシルバニア州にあるブリンモール大学(Bryn Mawr College)、ハバフォード大学(Haverford College)、スワースモア大学(Swarthmore College)の3校(※)に、アイビーリーグの一員である総合大学のペンシルバニア大学(The University of Pennsylvania)を加えた4校で構成されているコンソーシアムです。 コンソーシアムのメンバー大学の学生は、特定の規則の範囲内で、他のどの大学でも秋学期と春学期のコースに登録し、授業を受けることができます。

※近隣にキャンパスを構えるこの3校のみで形成しているトライ・カレッジ・コンソーシアム(The Tri-College Consortium)もあります。学生はどの学校での授業を受けることができ、課外活動で頻繁に共同作業を行うなど密接な関係を築いています。

■Great Lakes Colleges Association

インディアナ州、ミシガン州、ペンシルベニア州、オハイオ州にある私立リベラルアーツカレッジ13校のコンソーシアム。メンバーカレッジは、アルビオンカレッジ(Albion College)、アレゲニーカレッジ(Allegheny College)、アンティオキア大学(Antioch College)、デニソン大学(Denison University)、デポー大学(DePauw University)、アーラム大学(Earlham College)、ホープカレッジ(Hope College)、カラマズー大学(Kalamazoo College)、ケニヨンカレッジ(Kenyon College)、オーバーリンカレッジ(Oberlin College)、オハイオウェスリアン大学(Ohio Wesleyan University)、ウォバッシュカレッジ(Wabash College)、およびウースター大学(The College of Wooster)です。 このコンソーシアムは、単独の大学では実施できない学術プログラムを共同で推進することに重きを置いており、そのための施設や教員・スタッフを含めたリソースを共有しています。GLCAプログラムと呼ばれる共同の学外研究プログラムはいくつかの大学に設置されており、一定の基準を満たして資格を得た学生は希望するプログラムに参加することができます。

<実施されているGLCAプログラムの例>

  • ・ボーダースタディーズ(アーラム大学)
  • ・日本研究(アーラム大学とACM)
  • ・ニューベリー図書館セミナー(ACM)
  • ・ニューヨークアーツ(オハイオウェスリアン大学)
  • ・オークリッジサイエンスセメスター(デニソン大学およびACM)
  • ・フィラデルフィアセンター(アルビオンカレッジ)

また、コンソーシアムという名称ではありませんが、似たような制度を設定している大学群もあります。

マサチューセッツ州にある女子のみのリベラルアーツカレッジ・ウェルズリー大学(Wellesley College)には、マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology)、バブソン大学(Babson College)、ブランダイス大学(Brandeis University)、フランクリンオリン工科大学(Franklin Olin College of Engineering)との間に、Cross Registration(講義の相互登録)という制度があります。所定の登録手続きをとると、各大学で規定内の授業を受講することが可能で、自らの大学の卒業単位として換算することもできる制度です。Cross Registration登録をすれば、登録先大学の図書館や食堂などを使うこともでき、コンソーシアムとほぼ同様の仕組みとなっています。

意外と幅広く学べるリベラルアーツカレッジ
しっかり学ぶためには英語の高いコミュニケーション力が必須

リベラルアーツカレッジは、大学の規模が小さく、教授と学生の距離が近いためきめ細かい指導が行われているのが大きな特徴。反面、小さい大学ゆえに学べるコースの幅が狭く、とれる授業も少ないなどマイナスなイメージを持ってしまっている人もいるかもしれません。しかし実は多くの大学がコンソーシアムという他大学との連携により、大学の規模をはるかに超えたコース受講のチャンスを提供しているため、意欲があれば幅広い学びは十分に実現できる可能性は広がっています。コンソーシアム内の、それぞれの大学が得意としている分野の授業をとっていけば、各分野のレベルの高い講義を受けることもできるわけです。アットホームな部分もあり、学びの広がりもあり。リベラルアーツカレッジは、留学先の選択肢としてはかなり魅力的といえるでしょう。ただ、自主性が重んじられているリベラルアーツカレッジでは、とりわけ自ら学ぶ姿勢が非常に重要になります。留学を目指す場合は、入学当初から周囲の学生や教授と自在にコミュニケーションがとれるくらいのアカデミックな英語能力は必須と考え、早いうちからしっかり準備していく必要があります。

※この記事でご紹介している内容は2019年3月15日現在の情報に基づいています。

※この記事は、旧GLCウェブサイトの「グローバル海外進学コラム」2019年3月15日に掲載されたものです。

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