返済不要で海外大学へ。奨学金の4つの種類と、いま押さえておきたい最新動向
海外大学進学を考えるとき、多くの人が最初に不安を感じるのが費用です。一方で、海外大学進学には、返済不要の奨学金を活用できる可能性があります。今回は、高校卒業後に海外大学へ進学し、学士号の取得を目指す人が知っておきたい奨学金の種類と最新トピックスを、4つに分けて整理します。

給付型奨学金は「どこが支援しているか」で整理できる
海外大学進学に関わる奨学金は、制度名だけを見ていくと複雑に感じられます。まず、自分が海外大学の学士課程に進学するときに使える制度かを確認しましょう。そのうえで、「どこが支援しているか」によって分けて考えると、整理しやすくなります。
<海外大学進学で確認したい奨学金の4分類>
| 分類 | 代表的な制度例 | 特徴 |
|---|---|---|
| ① 日本の財団・民間団体による大型奨学金 | 柳井正財団 海外奨学金プログラム、笹川奨学金など | 支給額が大きく、支援が手厚い。対象大学が指定され、採用人数は少ない |
| ② 国・公的機関による学位取得型の奨学金 | JASSO海外留学支援制度(学部学位取得型)、外国政府奨学金など | 日本の公的制度と外国政府の制度がある。対象国・大学や応募条件は制度ごとに異なる |
| ③ 海外大学独自の給付金(Financial Aid) | 各大学のNeed-based Aid、Merit Scholarshipなど | 大学が直接支給。家庭の経済状況に応じたものと、成績・活動実績を評価するものがある |
| ④ その他の民間・自治体・分野別の奨学金 | 自治体、企業、国際交流団体、分野別団体などによる奨学金 | 特定の地域・分野・実績を持つ人が対象になることがある |
それぞれの特徴と、2027年秋入学に向けて実際に動いている募集情報を見ていきましょう。
① 日本の財団・民間団体による大型奨学金:対象大学を定め、手厚く支援する
支援額の大きさから、海外大学進学を考える高校生が確認しておきたいのが、日本の財団や民間団体による給付型奨学金です。対象大学を明示し、授業料や寮費などを大きく支援する制度もあります。
一方で、こうした大型奨学金は、大学出願そのものと深く関わります。どの大学を目指すのか、なぜその大学で学びたいのか、大学で学んだ先に何を実現したいのかまで、エッセイや面接で問われることがあります。
◆ 柳井正財団 海外奨学金プログラム
ファーストリテイリング(ユニクロ)の柳井正氏が設立した財団による、返済不要の給付型奨学金です。アメリカのおおむねトップ50に入る大学、および同等レベルのイギリスの大学が対象です。学校推薦が必要な「予約型」と、推薦不要の「合格型」の年2回の選考があり、両方に応募することも可能です。
| 項目 | 内容(2027年秋入学者向け) |
|---|---|
| 対象大学 | アメリカの総合大学30校+リベラルアーツカレッジ18校、イギリス7校(カナダは合格型のみ対象) |
| 募集人数 | 予約型約20名/合格型約20名 |
| 支給内容 | 原則年間US$115,000(イギリスは£70,000)を上限に、授業料・寮費・保険料などを支給。学習・生活支援金として別途年US$15,000(イギリス£11,000) |
| 主な応募条件 | 家計支持者の所得が2,700万円以下(直近2カ年)。予約型は学校推薦が必要 |
| 応募受付 | 予約型:2026年7月16日〜8月10日16:00(高校からの推薦書類は8月10日消印有効) 合格型:2026年12月頃に募集開始予定 |
<最新動向>第11期から、エッセイのテーマが一新されました
2026年6月に公開された第11期(2027年秋入学者向け)の応募内容では、日本語エッセイ3題のテーマがすべて変わりました。
これまでは「あなたの目指す将来の姿と実現したいこと」「それを実現するためにアメリカまたはイギリスの大学で何をしたいか」「最も力を入れて取り組んだこと・最も心を動かされたこと」という構成でした。第11期では、次の3題になっています。
□エッセイ#1:これから進学する大学で何を学びたいか。その分野に関心を持った理由と、これまでの取り組み(要約100字以内+本文600字以内)
□エッセイ#2:世の中で当たり前と捉えられていることで、あなたが変えるべきだと感じていること(要約100字以内+本文500字以内)
□エッセイ#3:これまでの経験の中で、特に深く考えさせられた出来事、あるいは自分の考えが揺さぶられた経験(800字以内)
【参考ページ】 柳井正財団 海外奨学金プログラム 応募要項
◆ 笹川奨学金(笹川平和財団)
社会課題の解決に意欲があり、海外で学ぶことで成長したいと考える人を対象とした給付型奨学金です。アメリカまたはイギリスの大学で学士号の取得を目指す、日本国籍の学生が対象です。年齢制限・所得制限がなく、専攻分野や卒業後の進路についても条件を設けておらず、間口が広いのが特徴です。
| 項目 | 内容(2027年秋入学者向け) |
|---|---|
| 対象大学 | 財団が指定する46大学(アメリカの総合大学25校+リベラルアーツカレッジ17校、イギリス4校) |
| 募集人数 | 最大35名程度 |
| 支給内容 | 実費(授業料・寮費〈食費含む〉・健康保険料など)に加え、定額奨学金としてアメリカUS$15,000/イギリス£11,000(年額)。入学・卒業時には、旅費や海外旅行保険料相当額を含む一時給付奨学金も支給 |
| 主な応募条件 | 日本国籍。年齢・所得・専攻分野・卒業後の進路の指定なし |
| 応募受付 | 秋期:2026年7月17日〜8月17日正午 春期:2026年12月以降(締切は2027年4月2日頃を想定) |
※他の給付型奨学金を受給する場合、本奨学金は満額支給とならず差額支給となるルールがあります。同時受給の可否は財団が決定します。
【参考ページ】 笹川平和財団 笹川奨学金 募集要項
◆ グルー・バンクロフト基金
アメリカのリベラルアーツカレッジ(LAC)への進学に特化した、歴史ある返済不要の奨学金制度です。総合大学ではなく、少人数教育のLACで学びたい人に向いています。4種類の奨学金があり、女子学生限定の「捨松スカラシップ」も含まれます。基金奨学生として選ばれた人のうち希望者は、出願準備中に在学生・卒業生からエッセイ指導などのサポートを無料で受けられます。
| 項目 | 内容(2027年秋入学者向け) |
|---|---|
| 対象大学 | 基金が認めるアメリカのリベラルアーツカレッジ |
| 募集人数 | 4種類の奨学金で計10名程度 |
| 支給内容 | 奨学金の種類により異なる(例:奨学金1は年US$80,000を上限に4年間/提携大学の授業料免除枠+定額支給など) |
| 主な応募条件 | 家計支持者の所得が2,000万円以下。奨学金により対象・条件が異なる |
| 応募受付 | 2026年7月1日〜9月7日 |
【参考ページ】 グルー・バンクロフト基金 2026年度基金奨学生募集要項(PDF)
【関連記事】 少人数だから、深く学べる!アメリカ・リベラルアーツカレッジの実力と奨学金事情
このほかにも、音楽・スポーツ・アート・学術の分野で世界に挑戦する若者を支援するリクルートスカラシップなど、分野や活動実績に着目した奨学金があります。自分の進路や分野に合う制度がないか、視野を広げて探してみましょう。
【参考ページ】 リクルートスカラシップ
② 国・公的機関による学位取得型の奨学金:幅広い進学先や、特定の国への進学を支える
国や公的機関による奨学金には、日本の公的機関が幅広い国への進学を支援する制度と、留学先の政府が自国の大学への進学を支援する制度があります。対象国、大学、専攻、年齢、語学力などの条件は、制度ごとに異なります。
日本から海外大学の学士課程へ進む人が利用できる、全国規模の代表的な制度がJASSOの「海外留学支援制度(学部学位取得型)」です。このほか、ハンガリー政府や韓国政府などが、日本人を含む外国人学生向けに学位取得型の奨学金を募集しています。
◆ JASSO 海外留学支援制度(学部学位取得型)
独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)が実施する、返済不要の給付型奨学金です。海外の大学で学士号の取得を目指す日本人学生等を対象としています。
対象大学を指定する財団系奨学金もあるのに対して、この制度は、一定の要件を満たす海外大学を幅広く対象とし、採用人数も比較的多いのが特徴です。近年は100名を超える規模で採用されています。
<2027年度募集の概要>
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 海外の大学で学士号の取得を目指す日本人学生等(日本国籍または永住許可者・応募時日本在住) |
| 支援予定人数 | 未定(参考:2026年度採用人数140名) |
| 支給額(月額) | 国・地域別に月額13万9,000円〜35万2,000円(例:アメリカ・イギリス・カナダ・シンガポール=35万2,000円)。ほか渡航支援金1万円 |
| 支援期間 | 原則4年間 |
| 主な要件 | 高校までの評定平均3.7以上相当/英語=TOEFL iBT 4.0以上(2026年1月21日以降に受験した場合)または80以上(2026年1月20日以前に受験した場合)、IELTS 6.0以上/家計支持者の所得2,000万円以下 など |
| 応募受付 | エントリー:2026年9月1日〜9月24日13:00(日本時間) 応募書類・推薦状等提出:2026年9月1日〜10月1日13:00(日本時間)締切 |
| 他奨学金との併給 | 可(併給先の奨学金団体の規定も確認) |
【最新動向】2027年度募集要項が公開されました(2026年7月16日)
2027年度募集は、2027年4月〜2028年3月の間に留学を開始する人が対象です。
通常応募では、応募者がまずエントリーを行い、その後、応募書類と高等学校等からの推薦状等を提出します。エントリー期間は2026年9月1日〜9月24日13:00(日本時間)、応募書類・推薦状等の提出期限は2026年10月1日13:00(日本時間)です。
また、2027年度募集でも都道府県推薦枠が設けられています。通常応募と都道府県推薦枠は併願可能ですが、都道府県推薦枠は通常応募と応募方法が異なるため、在籍中の高等学校等が所在する都道府県教育委員会の案内も確認しましょう。
【参考ページ】 JASSO 2027年度海外留学支援制度(学部学位取得型)
◆ 外国政府による学位取得型の奨学金
留学先の政府が、外国人学生を対象に学費や生活費を支援する制度もあります。例えば、ハンガリー政府の「Stipendium Hungaricum」は学士課程も対象で、授業料免除、月額奨学金、寮または住居費の補助、医療保険などを支援します。韓国政府の「GKS」は、学士課程・専門学士課程を対象に、往復航空券、授業料、韓国語研修費、月額の学業奨学金などを支給します。
国や年度によって、募集の有無、対象大学、年齢、語学要件が変わります。また、日本から応募できるか、どの機関を通して応募するかも制度ごとに異なります。JASSOの海外留学情報サイトや、各国大使館の公式情報で確認しましょう。
【参考ページ】
JASSO ハンガリー政府Stipendium Hungaricum奨学金
③ 海外大学独自の給付金(Financial Aid):大学ごとに支援の考え方が異なる
海外大学そのものが、国際学生に奨学金やFinancial Aidを用意している場合もあります。特にアメリカの大学では、家庭の経済状況に応じて支援額を決める「ニード型奨学金(Need-based Aid)」や、成績・活動実績などを評価する「メリット型奨学金(Merit Scholarship)」が見られます。
大学独自の支援は、国や大学によって考え方が大きく異なります。国際学生が対象になるか、どの程度の支援が受けられるか、出願時に別途申請が必要かは、大学ごとに確認が必要です。
<確認したいポイント>
- ●留学生が対象になるか
- ●家庭の経済状況をもとにした支援か、成績や実績を評価する支援か
- ●大学出願とは別に、書類の提出や申請が必要か
※アメリカの大学では、家庭の収入や資産を申告する「CSS Profile」の提出を求める場合があります。
◆ 大学独自の支援例
●ノースウェスタン大学(アメリカ):留学生もNeed-based Aidに申請できます。希望する場合は、大学出願時に支援希望を申告し、CSS Profileと、保護者の直近の納税書類(国に年次の納税書類がない場合は勤務先が発行する収入証明書)を提出します。英語以外の書類には公式英訳が必要です。留学生の選考はニードアウェアで、支援希望が合否判定に影響する可能性があります。
●トロント大学(カナダ):Lester B. Pearson International Scholarshipは、高校からの推薦(各校年1名)を受けた留学生を対象とするMerit Scholarshipです。授業料、書籍代、諸費用、4年間の大学寮の費用を支援します。
【最新動向】アメリカの「ニードブラインド」は現在10校
アメリカの大学の一部は、留学生に対しても「合否判定の際に家計状況を考慮しない(ニードブラインド)」かつ「大学が算定した必要額を100%満たす」という方針をとっています。2026年7月時点で、この方針を明示しているのは、ハーバード大学、イェール大学、プリンストン大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)、アマースト大学、ダートマス大学、ボウディン大学、ワシントン・アンド・リー大学、ブラウン大学、ノートルダム大学の10校です(いずれもアメリカ)。近年では、ワシントン・アンド・リー大学、ブラウン大学、ノートルダム大学が新たに留学生へ対象を広げました。
一方で、多くの大学は留学生に対して「ニードアウェア」、つまり奨学金の必要額が合否判断に影響する可能性がある方針をとっています。奨学金方針は大学ごとに大きく異なるため、志望校リストをつくる段階で、各大学のFinancial Aid(学資援助)ページを確認しておくことが大切です。
【参考ページ】
ノースウェスタン大学(アメリカ) International Aid Application Instructions
トロント大学(カナダ) Lester B. Pearson International Scholarship
④ その他の民間・自治体の奨学金:特定の地域・分野に合う支援
大型奨学金や大学独自の支援以外にも、自治体、企業、国際交流団体などが海外大学進学を支援している場合があります。例えば、出身・居住地域を対象とする自治体の制度や、特定分野で学ぶ人を対象とする制度があります。支援額は一部補助にとどまることもありますが、渡航費、生活費、初年度費用などを補う選択肢になることがあります。
◆ 東京都「都立高校等海外大学進学支援制度」
自治体が海外大学進学を大きく支援する動きも出てきました。東京都は2026年5月、世界トップレベルの大学への進学を目指す都立高校生などを対象とした給付型奨学金「都立高校等海外大学進学支援制度」の創設を発表しています。
| 項目 | 内容(2027年秋入学者向け) |
|---|---|
| 対象大学 | THE世界大学ランキング総合100位以内など、都が指定する大学 |
| 募集人数 | 10名程度 |
| 支給内容 | 授業料などの支援対象経費から130万円を差し引いた額に、世帯所得に応じた補助率をかけて算定。年間上限は400万円または800万円。支援期間は原則4年間 |
| 主な応募条件 | 都立高校等を2027年3月末までに卒業見込み、または卒業後3年以内。本人・生計維持者が原則として2024年5月1日から応募時まで引き続き都内在住で、学校長の推薦を得られること など |
| 応募受付 | 2026年7月1日〜8月19日 |
※2027年度(令和9年度)予算の成立を前提とした募集です。
お住まいの地域や在籍校によって、使える制度は異なります。こうした自治体の動きは今後も広がる可能性があるため、居住する自治体や在籍する高校の情報とあわせて、JASSOの奨学金検索サイトなどで自分が対象になる制度を探してみましょう。
【参考ページ】
都立高校等海外大学進学支援制度(給付型奨学金)|東京都教育委員会
奨学金を探すときの3チェック
自分のニーズに合った奨学金を調べる時は、次の3点をセットで確認しましょう。
<1. 自分の志望大学・課程が対象か>
国や大学が指定されている制度もあります。
<2. どの費用が支援されるか>
授業料だけでなく、寮費、食費、保険料、渡航費も確認します。
<3. 応募はいつ始まるか>
大学出願より前に、推薦状やエッセイの準備が必要な制度もあります。
<まとめ>
海外大学進学の費用は大きなテーマですが、返済不要の奨学金を活用することで、進学の選択肢が広がる可能性があります。
大切なのは、奨学金を「最後に探すもの」と考えないことです。奨学金の応募では、志望理由や活動実績、エッセイなど、大学出願と重なる準備が多くあります。大学選びや出願準備と同時に進めることで、互いの対策がそのまま活きてきます。
この夏は、まず上記の種類別に、自分に合った奨学金は何があるかを知るところから始めてみましょう。それぞれの特徴を押さえたうえで、自分の進路に合う制度を確認していくことが、海外大学進学への第一歩になります。
※本記事の内容は、2026年7月16日時点で公表されている情報をもとにしています。奨学金の対象大学、応募条件、支給額、選考方法、募集時期は変更される場合があります。実際に応募する際は、各奨学金団体・大学の公式情報を必ず確認してください。
海外トップ大学進学と、奨学金獲得を本気で目指す方へ
海外トップ大学や大型奨学金に挑戦するためには、成績や英語力だけでなく、自分が何を学びたいのか、なぜその大学を選ぶのか、これまでどのような経験を積んできたのかを、エッセイや面接で伝える力が必要です。
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